メタボリックシンドロームのワンポイントアドバイス

2006年6月 1日

 近年、動脈硬化性疾患の発症には耐糖能異常、高脂血症、高血圧などの既存の危険因子が、たとえ程度は軽くても、一個体に多数集積することが重要であることが明らかとなっている。
 
 十数年前よりシンドロームX、死の四重奏、内臓脂肪症候群、インスリン抵抗性症候群、マルチプルリスクファクター症候群などと呼ばれてきたが、最近、欧米ではメタボリックシンドローム(metabolic syndrome)と呼称されるようになり、日本においても平成17年4月日本内科学会など8学会でメタボリックシンドロームの診断基準が決まった。
 
 内臓脂肪蓄積を必須項目としCTスキャンで臍レベルの内臓脂肪面積が100cm2を、簡易的には臍レベルでの腹囲が男性で85cm、女性で90cm以上を内臓脂肪の蓄積としている。
(1)耐糖能異常の診断基準は空腹時血糖110mg/dl以上
(2)脂質代謝異常の診断基準はトリグリセリド血症150mg/dl以上
     またはHDLコレステロール血症40mg/dl未満
(3)高血圧の診断基準は収縮期血圧130mmHgまたは拡張期血圧85mmHg以上で、これら3項目のうち2項目以上有する者をメタボリックシンドロームと診断する。
 
 メタボリックシンドロームとは過栄養や運動不足により腹腔内の内臓脂肪が蓄積し、内臓脂肪から直接分泌される遊離脂肪酸やグリセロールが直接肝臓に流入し、糖・脂質代謝異常を引き起こし、一方、内臓脂肪細胞から分泌される生理活性物質であるアディポネクチンの分泌低下、PAI-1(プラスミノーゲン活性化阻止因子)やTNF-α(腫瘍壊死因子)の分泌増加が糖尿病、高脂血症、高血圧、しいては動脈硬化症を生じると考えられている。
 
 メタボリックシンドロームの予防および治療は、まずライフスタイルの改善(適正体重の維持、食生活の是正、身体活動の増加、禁煙)である。
 
  数kgの内臓脂肪蓄積を減少させることにより、糖尿病、高脂血症、高血圧は著明に改善する。
 
 厚生労働省(松澤班)の内臓脂肪蓄積者の食生活に関する疫学調査結果、内臓脂肪蓄積者は一回食事30分以上、食事は満足するまで食べる、間食をよくする、スナック菓子・アイスクリームや甘味飲料水を好む、緑黄色野菜がきらい、料理に砂糖をよく使う、の項目で有意に頻度が高くなっていた。また、内臓脂肪蓄積者の生活習慣は自動車を用いることが多く、喫煙者が多いことが明らかとなっている。
 
 メタボリックシンドロームのみなさんはこれらの生活習慣を改善することが必要である。
 
 メタボリックシンドロームは過栄養に長期的にさらされているわが国や欧米において動脈硬化性疾患の最も頻度の高い基礎病態と考えられ、メタボリックシンドロームを減少させることは健康寿命の延伸、医療費の適正化につながると考えられる。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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