メタボリックシンドロームと健診・保健指導
20数年ぶりの医療制度大改革の目玉として、生活習慣病の抑止と国民皆保険制度維持のため、平成20年4月より内臓脂肪型肥満の概念を導入した健診、保健指導が始まる。40~60歳の中高年男性をターゲットとしている。しかし、この年代の男性は、仕事で平日の昼間には受診できない人がいる。このため、健診機関には土曜、日曜、祝日と夜間での健診、保健指導が求められている。
この中高年男性へのメタボリックシンドローム対策が果たして成功するであろうか。秦の始皇帝時代に活躍した韓非子は「それ、香美脆味(こうびぜいみ)、厚酒肥肉(こうしゅひにく)は、口に甘くして形を疾(や)ましめ・・・」つまり、「香りや味がよく、高級な酒や脂がのった肉をたくさん食べると、食欲を満足させることはできるが、お腹が張り出して肥満となる・・・」と内臓脂肪型肥満を戒めている。2200年以上前の中国でさえ、過食・肥満はよくないとしている。
日本の中高年男性の肥満は、夕方からの宴会や居酒屋での飲食によるところが大きい。日本糖尿病学会理事長の春日雅人神戸大学教授も「中高年のメタボリックシンドロームを減らすには、酒席の場で仕事の交渉を円滑に進めるという日本特有の文化を見直さなくてはならない」と述べられている。
聖徳太子の「17条の憲法」には、「功過を明確にし、賞罰を必ず当てよ」という韓非子の「信賞必罰」の思想が盛り込まれている。平成20年からのメタボリックシンドローム対策が始まると、メタボリックシンドロームを放置して心筋梗塞や脳梗塞になった場合、自己責任として自己負担率が高くなるかもしれない。メタボリックシンドローム対策に成功しなかった健康保険組合には国からペナルティが課されることが決まっており、夜の飲食業界は厳しくなるかもしれない。
そのためには、飲食業界はメニューにカロリーを表示する、おいしい低カロリー食品や料理を開発する、低カロリーメニューの宴会コースを作成するなど、喫緊の対策が必要であると考える。