健康寿命とメタボリックシンドローム

2007年1月19日

 メタボリックシンドローム対策の最大の目的は健康寿命の延伸と医療費削減である。
平成18年12月20日、国立社会保障・人口問題研究所が「日本の将来推計平均寿命」を発表した。平成17年(2005年)の平均寿命は男性78.53歳、女性85.49歳、平成67年(2055年)は男性83.67歳、女性90.34歳となっており、50年先の平均寿命は約5年延びることになる。

 重要なのは健康寿命である。いくら寿命が延びても脳卒中などで片麻痺や寝たきりになれば、元気で活動的な暮らしができなくなる。自立できない年数は現在男性6年、女性7年といわれており、メタボリックシンドローム対策は、心筋梗塞や脳梗塞など防ぐことによって健康寿命を伸ばすことにある。

 もう一つの目的は医療費削減にある。厚生労働省の老人医療年報では2003年の1人当たり老人医療費は75万2721円で、65歳以上の高齢者の割合は2005年の20.0%から2025年には28.7%にあがる。高齢者が1000万人増加するとしても、20年後には医療費が7.5兆円増加し、医療財政は破綻するかもしれない。

 国民皆保険制度を守るためにも、メタボリックシンドローム対策に力を入れる必要があるが、予防にお金をかけすぎないバランス感覚も必要である。

 最近、気になることは、自殺者が年々増えていることである。平成7年には2万1420人だったものが、平成10年からは急に増え、平成15年は3万2109人となっている。

 職場で多忙な人は、時には仕事を離れたことを考えればよい。窓から外を見下ろすと、冬の昼下がり日溜まりの中、人や車が行き交う。空を見上げれば雲がゆっくり動いていくのが見える。毎日、忙しい人は忙しいなりに、ひと時のゆとりを持てば、家族を思いやる心を忘れず、燃え尽き症候群や自殺者も減るのではないだろうか。

 「人はこの世を苦海と呼ぶ。この世は苦海でも、楽海でもなく、大海だ。
 嬉しいときは喜び、腹が立つときは怒り、悲しいときは泣き、楽しいときははしゃげばよい。言いたいことは言い、書きたいことは書けばよい。
 精一杯、生きていけばよい。」と私は瞑想する。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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