企業の品格と肥満問題
2006年11月9日EU(欧州連合)保健・消費者保護総局は肥満対策に真剣に取り組む企業名を発表した。コカ・コーラ社、ペプシコ社、マクドナルド社などだ。「12歳未満の子供にソフトドリンクのコマーシャルをしない」というのが、コカ・コーラ社の表彰の理由だ。
厚生労働省の調査で、女性の内臓脂肪型肥満者は料理に砂糖をよく使うということが統計学的に有意であることが示されている。動物実験においても砂糖が内臓脂肪を増加させることが、大阪大学第2内科の毛野義明らによって明らかにされている。
肥満対策先進国のアメリカでは、企業における肥満対策として1980年代「食品会社は客の食品選択に影響を与えないよう、甘いデザートを陳列棚の目立つところや、レジの前に置かない」「高カロリーのものを自動販売機におかない」
「ファーストフード店はビッグサイズの飲み物を売らない」「太ることを制限したメニューをのせる」という提案がされている。
先日、ファーストフード店の社長さんが「野菜サラダを販売する」とテレビで語っていた。まさにアメリカの20年後をいっていると思ったが、企業の姿勢としてはよい。
写真は、食欲を抑える満腹中枢を電気破壊して、私が作成した肥満ラットである。脳の中心付近にある視床下部腹内側核を破壊したラットは、昼も夜も食べつづける。
食べ物の選り好みをして、まずいものは食べない。ただ太るだけでなく、ケージの隅にいて動かない。ものぐさにもかかわらず、すぐに噛みつき凶暴なラットとなる。
それでも食べる量は、普通のラットの2倍にもならず、動物の欲には限りがある。しかし、人間の欲は金銭欲、名誉欲、地位への欲など2倍どころか際限がない。いくら稼いでもこれでいいと満足することがない企業もあるのではないか。
国を挙げてのメタボリックシンドローム対策の中、カロリーのことは全く考慮せず、ただ利益のみを追求する企業は淘汰されていくのではないか。企業は利益を出すのは当然のことだが、国民の健康にも考慮する品格が求められる。