日本人気質と標準体重
日本人は欧米人にコンプレックスを持っているようだ。ダイエット番組で、海外の研究者にコメントを求めているのを見ることがある。欧米のデータで権威付けようとしている。
自動車産業が世界でトップであるように、現在、ダイエット関連の研究では日本が最先端を行っている。2006年の国際肥満学会では臨床研究部門(松澤佑次住友病院院長)も基礎研究部門(寒川賢治国立循環器病センター研究所副所長)も日本の研究者が受賞した。
1982年私達が標準体重を作成し始めた当時、肥満の判定は日本では厚生省の平均体重やブロ-カの桂変法(身長から100を引き0.9を掛ける)が使われていた。国際的にはメトロポリタン生命保険会社の体格別の体重が最も多く使われ、これは体格を大中小と分けて身長別の正常な体重の範囲を決めていた。
BMIが出始めた頃で、BMIも18.5から25を正常というように幅を持った基準にしている。このように標準体重という概念は欧米にはあまりない。日本人は標準や平均を基にして、自分がどの位置にいるのか考えるのが好きなのかもしれない。
BMIを基盤とし、疾病を考慮した標準体重を確立し学会で発表するまで6年、英語の論文になるまで実に9年を要した。図は私が作成したものだ(Tokunaga K, et al: Int J Obes 15:1, 1991)
肺疾患、心疾患、上部消化管疾患、高血圧、腎疾患、肝疾患、高脂血症、高尿酸血症、糖尿病、貧血の10の疾患を統計用紙に1例1例正の字を書いて集計した。コンピューターのあまりない時代、大阪大学第2内科の肥満研究グループが、夜の会議室で手作業で完成させた。この標準体重には魂がこもっている。
若い人の中には、この標準体重は欧米の死亡率から導かれたと思っている人がいるようだ。日本人は自国の作ったものを素直に受け入れない傾向がある。
この標準体重を広めるため、メトロポリタンの中等度の体格で死亡率の低い人のBMIを調べ、平均が22.5であったことから22が国際的にも妥当な値だと、論文の考察の中で引用した。これが巡り巡って欧米の死亡率の低いBMIから、標準体重が決まったと思ったのかもしれない。
日本人は欧米人へのコンプレックスから逃れ、もうそろそろ自信を持ってアジアのリーダーとなってもいいのではないか。