小児肥満予防と企業の役割

2007年3月 9日

 2007年2月9日から3日間、韓国のソウルで開催された第4回アジア・オセアニア肥満学会で、小児の肥満が増加した最も大きな要因は中国・韓国を含め(1)ファーストフード(2)甘味飲料水(3)テレビゲームとされた。これは欧米のこれまでの見解と一致したものである。

 米国の小児がテレビ画面に向かう時間は1日8時間に達している。メイヨークリニックの研究(Pediatrics 118:e1831,2006)では小児25人を(1)座ってテレビを見る(2)テレビゲームをする(3)活動しながら行うテレビゲームをする(4)トレッドミル(スポーツジムなどにあるランニングマシーン)の上を歩きながらテレビを見る、の4つのグループに分け検討している。

 結果は(1)と(2)のグループのエネルギー消費量は同じで、(3)のうちボールをキャッチするテレビゲームをしたグループのエネルギー消費量は(1)(2)のグループの3倍となり、ダンスをするテレビゲームをしたグループは最大の6倍になっている。(4)のトレッドミルの上を歩きながらテレビを見る標準体重の小児ではエネルギー消費量が3倍に肥満の小児では5倍になっている。

 体を動かせるテレビゲームは小児の肥満を予防すると考えられ、開発が期待される。甘味飲料水については茶飲料など低カロリー飲料が増え改善しつつあり、ファーストフードも低カロリーメニューの導入などが行われている。

 しかし、ビッグサイズを新しく販売するなど時代に逆行する企業もある。マスコミはコマーシャルで企業のお世話になっているので、頭の中では注意してあげたいと思っていても口には出せない。会社の新しい商品開発の会議で「国民の健康も考えて商品を作るという世界の流れ」を上司に嫌われないよう上手に進言する社員はいないのだろうか。

 京都四条河原町から近い京都最古の禅寺建仁寺がいい。私は街中にある静寂が好きだ。暖かな春も近い冬の日、建仁寺では耳を澄ますと木のそよぐ音、小鳥のさえずりが聞こえる。ほの暗いお堂の中の天井に描かれた畳180畳分の双龍図は存在感がある。小泉淳作が1年10か月の歳月をかけ、1点1点丁寧に描いている。2つの龍が争うのではなく互いに助け合って法を守っている。

 建仁寺に行くまでの祇園月見小路には美味しそうなレストランが多い。京料理「舞妓」は1品1品に花や木が添えてある。大きな食器に塩で滝や川が描かれている。京料理はアートと自然と食べ物が融合している。京料理はヘルシーでいい。

 小児肥満予防で(1)ファーストフード(2)甘味飲料水(3)テレビゲームにおける企業の役割は大きい。企業が利益を求めるのは当然のことだ。企業には従業員やその家族もおり、現状維持は仕方がない。しかし、利益のみを優先し、子供達の健康を全く留意しない社長の責任は大きい。小児肥満を助長する方向に向かう企業の経営陣は、世の中から淘汰されることを覚悟する必要がある。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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