外食と自然環境

2007年3月13日

 食事療法はメタボリックシンドローム治療に必須で、運動療法とならんで最も重要な治療法である。メタボリックシンドロームにおける糖尿病、高血圧、高脂血症の多くは減量による内臓脂肪減少により改善する。外食や旅行を契機として減量に挫折することが多い。

 勤務者にとって、毎日とる昼食での外食の取り方は重要だ。昼食は時間内に行ける、できるだけ遠い食堂に歩いて行くと健康によい。外食は麺類など低エネルギーの料理を選びがちになるが、栄養が偏っているので種々の種類の食品が使われている料理を選び、その中の脂ものや糖質を残すなど、食べ残し方を工夫するとよい。刺身定食、焼き魚定食、煮物定食、幕の内などの定食は栄養のバランスがとれている。 

 和食は他の料理法に比べ低エネルギーであり、欧米の食事療法の手本も和食に近いものとなっている。日本型食生活はご飯を中心に旬の野菜や魚を組み合わせ、これらを醤油、味噌などの調味料で味付けし、材料の持ち味を生かした料理法で、主食と副食を交互に食べるものである。和食を中心とした食生活は飽きがこず、長期継続が可能である。

 私は健康のため毎日高槻健康管理センターから12分かけて、JR摂津富田駅の近くの食堂まで昼食をとりに歩いて行っている。お腹を使った呼吸をしながら歩くのがよい。吐くのを3、吸うのを1の割合で、息を吐ききった後で速く吸う。例えば、1(吐く)2 (吐く)3 (吐く)4 (吐く)5 (吐く)6 (吐く)7(吸う)8 (吸う)と心の中で数えながら、奇数で左足、偶数で右足と速く歩く。

 JR富田駅近くの「あじとみ」は四万十川のウナギ、和歌山の地鶏が名物の食堂だが、昼は日替わり定食がある。焼き魚、煮魚、和牛野菜、ハンバーグなどをメインに小鉢、汁、漬け物がついてくる。2週間つづけて飯腕の底が見えない程度にご飯を残していたら、私が店に入ると「ご飯少なめ」と言われるようになり、注がれるご飯の量が今では他の人の半分以下となって、ダイエットに役立っている。

 食事の後はゆっくりと景色を見ながら散歩してセンターに戻る。松下電器の排水路の水はきれいだ。10cm程の黒っぽい魚が数100匹づつ群を成して泳いでいる。餌を目指して白鷺などいろいろな鳥が排水路に集まってくる。足は第2の心臓と言われるぐらい血液の循環に関係する。足の筋肉が収縮すると足の血管の中にあった血液が全身に回り、歩くと頭がクリアになった感じがする。高槻に来て足の浮腫もなくなった。

 寒気がぶり返した一昨日の日曜日、宝塚にある清荒神清澄寺に行った。鉄斎美術館の横を抜けていくと龍王滝がある。滝壷の左の岩壁をくり抜いて不動明王が彫ってある。冷たい空気をお腹一杯吸って気功法八段錦、目力をつけ気力を増す第七段「攅挙怒目増気力」を舞う。滝の音を聞きながら娘の前で舞う八段錦は心地よい。都会育ちの娘は「コンクリートジャングルに毎日勤めていると、深緑の森に心が癒される」と言う。森はメタボリックシンドロームのいい薬なのかもしれない。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

著作権について