高齢者の生き方とメタボリックシンドローム

2007年3月28日

 人は誰も皆、老いと向かい合わなくてはならない時が来る。

 高齢化社会が進み、日本の総人口は2005年の1億2777万人から2055年には8993万人と3割減少し、65歳以上は3646万人と5人に2人(40.5%)が高齢者となる。

 寝たきりで自立できない老後を過ごさないためにもメタボリックシンドローム(内臓脂肪蓄積、糖尿病、高脂血症、高血圧)対策が必要である。

 松尾芭蕉は50歳の時「旅に病(やん)で夢は枯野をかけ廻(めぐ)る」と作句し、4日後あの世に旅立った。病弱だった吉田兼好は「徒然草」の前段を38歳で、後段を48歳で著している。中学、高校時代に松尾芭蕉も吉田兼好も老いた人が書いていると思っていた。私はもう彼らの年齢を超えている。

 老後をどう生きるかは、それぞれの人生観による。50歳代で隠居する人もあれば、80歳代でも若い人と同じように現役で活躍している人もある。

 古代インド人は、人生を学生期(がくしょうき)、家住期(かじゅうき)、林住期(りんじゅうき)、遊行期(ゆぎょうき)の4つの時期に分けることを理想とした。

 学生期とは人生の最初の期間で、いろいろな事を学び経験をつむ時期。家住期とは一家をかまえ、職業に専念する時期。林住期とは家を出で森林に住み隠居する時期。遊行期とは旅に出て放浪する時期である。

 作家五木寛之は「林住期とは、生きるための仕事からリタイアして、自由な時間を持つゆとりができ、読書にふけり、自分の一生をふり返り、人生とは何かを思考する、人間のもっとも充実した季節」と百寺巡礼第1巻奈良の中で述べている。

 いずれの生き方にせよ、体と心が健康でなくては自立して老後を過ごすことは難しくなる。体と心の健康づくりが大切だ。

「世界には10億人の太り過ぎた民がおり、8億人の飢えた民がいる。
 日本では体は栄養が過剰となり、心は栄養が不足してきている。
 脂肪細胞は小さくなるが、どんなに痩せ細った人でも脂肪細胞のない人はいない。
 心も栄養を与えないと心は痩せ細っていくが、枯れはてることはない。
 正常な大きさの脂肪細胞を維持するにはバランスのとれた食生活、適度な運動が必要だ。
 心の栄養には自然と接すること、友と接すること、書を読むこと、過度な仕事を背負わないこと、歩くこと、呼吸を整えること、十分睡眠をとることがよい」と老境を楽しむ私は考える。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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