スポーツ選手は健康という落とし穴

2007年4月 3日

 2007年3月31日から4月8日まで第27回日本医学会総会(岸本忠三会長)が大阪で開催されている。4月1日大阪城ホールの企画展示を見学に行った。健康に対する関心が高いためか、人出が多く盛況である。

 最先端の手術室の映像の前など、通れないぐらい人だかりとなっていた。展示もいろいろ工夫がしてある。私も何度か学会の準備をしたのでわかるが、見学をする方は楽だが、準備をする方は大変なことだったろうと推察する。

 健康診断のブースも人気のあるところは1時間待ちになっていた。生活習慣チェックのブースには10分待って入った。私への総評は15点満点中10点で問題なく、軽く汗ばむ程度の運動を習慣にしましょうとコメントがあった。

 肥満専門家の業(ごう)で、肥満に関する所をついついチェックしてしまう。健やかのブースでBMIについて「BMIは体重/身長の2乗で、身長と体重のバランスを見たものある。BMIが高い肥満は高脂血症や高血圧、糖尿病を合併しやすい。基準値であることが、いつも健康であるとは限らない。ガイドラインの基準は目安であり、個人(自分)にとって健康なBMIを知っておく必要がある」という主旨のことが書いてあった。

 全くその通りで、上手にわかりやすく記載してある。その人の生まれつきの骨格の大きさによっても、運動によってもBMIは違ってくる。

 その横に、一般の人に分かりやすいようにプロスポーツ選手の例を出している。BMIが高くても健康な例として、BMIが29.43と、BMIが26.85の有名プロ野球選手が載っている。

 しかし、2人とも肥満でない例になるかもしれないが、健康であるという例にはならない。運動能力が秀でていることと、健康であることとは別だ。必要以上に筋肉がつきすぎれば、怪我をしやすい。

 「スポーツをやることは健康によいが、スポーツ選手は健康とは限らない」ということは意外と知られていない。そこに落とし穴がある。女子マラソン選手に貧血が多いことは周知の事実である。

 運動はメタボリックシンドローム対策に必須だが、スポーツ選手が行っているような激しい運動をして、心筋梗塞を起こすことも少なくない。汗ばむ程度の歩行や犬との散歩など無理をしない運動で十分だ。

 大阪城の桜は5分咲きで、この終末には桜も見頃になるだろう。入場料無料なので、花見もかねて健康についての勉強をしに、大阪城ホールに行くのもよい。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

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