輸入ダイエット食品の落とし穴

2007年4月 5日

 2007年3月31日大阪大学銀杏会館で第55回大阪大学第2内科内分泌代謝内科研究会が開催され、輸入ダイエット食品による甲状腺中毒症の2例が報告された。

 1例は20歳代の男性で平成18年8月に服用し、1ヶ月で14kg体重が減少している。もう1例は30歳代の女性で平成18年10月から服用し、最初の1ヶ月でこちらも同じ14kg体重が減少している。

 いずれも血液中の甲状腺ホルモン濃度が上昇し動悸、発汗、手の振るえなどの甲状腺機能亢進症の症状が出ている。食品からも甲状腺ホルモンが検出されている。体重が減ったのは主に筋肉が減ったためで、健康によくない。

 厚生労働省に報告したが、患者さんはインターネットで購入し、サイトが閉められており追跡できなかったとのことだ。

 福岡市からもダイエット食品(アメリカンビューティスリムダイエット)から甲状腺ホルモンが検出され、厚生労働省から「医薬品成分を含有した個人輸入ダイエット食品に注意喚起(20070322)」が出されている。

 私も以前、20歳代の男性でダイエット食品による甲状腺中毒症を経験したことがある。一昨年、どんな街で患者さんが持っていたダイエット食品が作られているか興味があり、2泊3日で中国広州市を訪ねた。

 土曜日の午後、広州市内の一流ホテルの窓から見下ろす公園では、数十人ずつ400人近い人がトランプをしている。私は時計をはずし、汚い恰好をして街に出た。

 土埃の街の地べたに坐って1時間、道行く人々を眺める。下から見ると世の中がわかる。サンダルを履いている人が50%、革靴を履いている人は20%もいない。春なのに95%の人は半袖姿で残りは上半身裸だ。日本に比べゆっくりと歩いている。広州市では太った人を見かけなかった。

 「やせ薬を売っている店はないか」と地元のガイドさんに聞いたが「知らない」と言う。地元ではやせ薬を買う人はなく、大部分は輸出用だろう。広州市の人はこの街で痩せ薬が作られ、日本で何千人という健康障害を引き起こしていることを知らない。

 月曜日の午前10時、珠江沿いの公園では約40人ずつのグループが20組ぐらい、太極拳を集団で舞っていた。この簡化太極拳は1956年中国で生まれた。日本でもメタボリックシンドローム体操を考案し、国民運動とすればよい。 

 輸入ダイエット食品は決して安全な食品ではない。インターネットでは掲示板などで、いろいろなダイエット食品の実際の効果について情報交換をし、危険を承知で効果のあるダイエット食品を購入している人達がいる。そこには大きな落とし穴がある。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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