休養・温泉・読書とメタボリックシンドローム

2007年4月17日

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策には休養が必要だ。自然がいっぱいの温泉宿がいい。

 温泉はリラックス効果と血液の循環をよくする効果がある。洗う、つかるという動作によって爽快感をもたらすだけでなく、直接皮膚や筋肉へ働きかけることによって、循環を高める。

 循環が促進されると腎臓の排泄機能も促進される。温泉には発汗作用や、精神の鎮静作用もある。足浴、半身浴の部分浴も効果的だ。

 2007年4月7日から山陰の三朝温泉に、84歳になる母を連れて行き、かけ流しの湯がある「三朝館」に宿泊した。宿の前は桜が満開で、橋を渡ると田山花袋や与謝野鉄幹、晶子らの石碑がある。著名人が三朝の湯に入りに来ている。

 「妻をめとらば才たけて見目うるわしく情あり、友を選ばば書を読みて、六分(りくぶ)の侠気(きょうき)四分の熱。」と与謝野鉄幹は詠んでいる。

 私には書を読む友が多い。先日亡くなった城山三郎の「官僚たちの夏」と "風車、風の吹くまで昼寝かな"の名ゼリフがある広田弘毅を描いた「落日燃ゆ」は、米国留学中に銀行員をしている友人が貸してくれて読んだ。

 2007年4月2日、市役所の友人からメールが届いた。富谷至「韓非子」(中公新書)740円と阿辻哲次「近くて遠い中国語」(中公新書)740円が面白いと一読を勧めてきた。

 さっそく梅田の紀伊國屋で購入した本を読んで、私が諸子百家の中でも韓非子に惹かれた謎が解けた。小学生時代に読んだ吉川英治の三国志に出てくる諸葛孔明は、韓非子を書写していた。諸葛孔明の考え方が、私の頭の中に刷り込まれていたのだろう。

 故郷の広島県庄原市は山間部で、子供の頃、テレビはNHKしか受信できなかった。塾も行かず、参考書や問題集も買ったことはなかった。ファミコンやDVDもなかった時代だ。夜はNHKを見るか、父の書斎に並べてある本を読むぐらいだった。

 書物を読まなくなっているという今の子供達の頭の中には、どんなことが刷り込まれているのだろう。物にあふれた現代と古典しかなかった昭和30年代と、どちらが精神的に豊かな社会だったのだろう。

 毎日1時間散歩し、2日に1冊の本を読めば1ヶ月1万円で楽しい老後が送れそうだ。忙しい人こそ温泉宿でストレスを解消し、メタボリックシンドロームを予防して欲しい。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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