創造力とメタボリックシンドローム

2007年5月 7日

 急速な高齢化に伴い疾病構造は変化し、メタボリックシンドローム関連の死因に占める割合は3割、医療費に占める割合は約4分の1に増加している。メタボリックシンドローム対策による健康寿命の延伸には、創造力を持った人が必要だ。

 平成19年4月厚生労働省は全国医療費適正化計画(案)を公表した。平成16年度の医療費は32.1兆円で、そのうち生活習慣病は10.4兆円を占める。悪性新生物2.6兆円、メタボリックシンドローム関連疾患7.8兆円(虚血性心疾患0.9兆円、脳血管障害2.1兆円、糖尿病1.9兆円、高血圧性疾患2.8兆円)となっている。

 死因別死亡割合は悪性新生物31.1%、メタボリックシンドローム関連疾患29.8%(心疾患15.5%、脳血管障害12.5%、糖尿病1.2%、高血圧性疾患0.6%)となっている。

 建築家の友人が、脳科学者・作家の茂木健一郎氏「脳と人間・・昏迷の時代を生きるヒント」についてメールしてきた。茂木氏は「創造性は体験と意欲のかけ算で、齢(よわい)を重ねて体験が蓄積されているのに創造性がないのは、意欲がないからだ」と主張しているという。

 私も全く、その通りだと思う。しかし、私の友人を見ると体験、意欲はあっても創造性を発揮できない人が多い。私の年代になると、各企業や官庁の要職につき部下の仕事のチェックに追われ、自由な時間がないからだ。

 私が大阪大学の同級生の中で、天才ではないかと思った人に福並正剛君がいる。学生時代、大阪駅前の旭屋書店に行った。英語の本をめくってそのページを丸暗記する競争をした。10分間目を凝らせて覚え、本を閉じて暗記した文章を言いあった。私は2~3行しか言えなかったが、彼は1ページまるごと覚えていた。

 福並君は心不全に対して新しい治療法を開発した。彼は創造性も備えている。しかし、彼には創造性を発揮する時間がない。手先が器用で、心臓カテーテルによる不整脈の治療が関西でもトップクラスといわれ、朝から夜遅くまで不整脈治療に追われている。患者さんは福並君の技術を求めて押し掛けてくる。時間がないため、彼の天性の創造力は必ずしも生かされていない。

 私は「創造力=体験×意欲×自由な時間」だと思う。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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