ギャンブル依存社会とメタボリックシンドローム

2007年5月 8日

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策として、毎日行える歩行は重要である。安心して歩ける生活道の整備などが必要である。

 ギャンブルは必要悪の面もある。自治体の医療・福祉の一部はギャンブルによって支えられている。ギャンブルによる税収は右肩上がりとは限らない。下がることもある。

 ある自治体では、2つの要因により財政が悪化した。一つはギャンブルによる収入が40%に激減したことだ。自治体病院への補助金は減り、新規医療機器の購入は2年間凍結され、医学書の購入費は3分の2になった。

 昨年、中国澳門(マカオ)を訪れた。2006年マカオのカジノ売り上げは8400億円となり、米国ラスベガスの7900億円を抜いて世界一となった。マカオは東洋と西洋が混在した街で、キリスト教会の前で中年男性が1人、黙々と武術としての太極拳を行っている。

 338mのマカオタワーの60階に、回転展望レストランがある。そこのバイキングは美味い。研修に来た大勢のJTB社員が、肉料理のお代わりをしている。窓の外はオレンジ色の服を着た観光客が、命綱を付けてスカイウォークをしている。

 宿泊したホテルの1階には高級ブランドショップが並び、豪華なプールがある。ホテルの隣には大きなカジノがあり、賑わっている。カジノ収益のうち30%が税金として支払われ、マカオ税収の70%を占める。マカオはカジノの収入で潤っており、15歳以下と60歳以上のマカオ市民の医療費は無料だ。

 自治体の財政が厳しくなると、自治体病院への補助金は減って経営は悪化する。外部からの当直医は、同じ仕事量であれば手当の多い病院を選ぶ。他の自治体病院より高い当直料を支払えなければ、院内の医師の当直回数は増え、過労になって救急医療をつづけることができなくなる。市民は心筋梗塞・狭心症や脳梗塞になっても、救急車で市内の病院へ行けなくなる。

 自治体病院の10~50%が閉鎖に追い込まれるのではないかと囁かれている。財政が豊かな市の自治体病院が生き残り、財政の厳しい市の自治体病院が閉鎖に追い込まれる。

 ギャンブル収入は乱高下する。ギャンブルによる税収を医療・福祉に使うなら、恒久的なものではなく一時的なものに上手に使うのがよい。

 「メタボリックシンドローム対策として、安心して歩ける生活道の整備などに当てること」を勧める。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

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