腎不全と糖尿病
日本の末期腎不全は世界で最も頻度が高い。2005年12月31日の時点で、日本には25.8万人の透析患者さんがいる。腎炎からの透析は横ばいだが、糖尿病による透析が急激に増加し42%になっている。
日本人が腎不全になりやすいわけではない。日本の腎透析医療は世界一で、諸外国では早期に亡くなるが、日本では30年以上透析をつづけている人もいる。
2007年5月24日から3日間、仙台で第50回日本糖尿病学会(岡芳知会長)が開催される。プログラムを見ると「慢性腎臓病(CKD)の概念と糖尿病」のシンポジストに、羽田勝計旭川医科大学教授の名がある。
羽田教授は大阪大学時代の2年後輩だ。兵庫県西宮市にある近くのとんかつ屋「てる」で、大学時代よく出会った。てるは阪神大震災で、押しつぶされ、ぺしゃんこになっていた。「てる」のおばちゃんはどうなったのだろう。人間いつ、どこで、何が起こるかわからない。
ある学会の理事長が「後藤由夫先生世代には偉い人が多い」と言われていた。後藤由夫東北大学名誉教授は著書「楽天知命―糖尿病とともに四十五年」の中で、楽天知命は「天を楽しみ命を知る、故に憂えず」という易経からの言葉で、「生を受け天から与えられたものをのびのびと発揮したい、楽しみたい。生あるものに死があることは、幼い頃から知っている」と述べられている。
後藤先生は1925年生まれで、20歳で終戦を迎えられたことになる。青春の多感な時期を、生と死に想いを馳せながら過ごされたのだろう。中国でも死がいつ訪れるかもしれない春秋戦国時代に、諸子百家が出ている。
日本糖尿病学会は宇部、徳島、富山、山形など地方都市で開催されることが多いので楽しみだ。前回、仙台での日本糖尿病学会では気仙沼に立ち寄った。ホテルは修学旅行客のため満室で、木賃宿に宿泊した。帳場の壁には、山下清の本物の絵が飾ってあった。山下清が宿泊していたという。
宿の近くの路地裏のすし屋に入って、フカヒレのにぎり寿司を食べた。ふと前を見ると色紙があり「仙台での学会にて立ち寄る」と書いてある。私と同じような人がいる。名前をよく見ると斉藤茂太と書いてあった。見知らぬ町での偶然の発見はうれしい。
内臓脂肪型肥満の概念を導入したメタボリックシンドローム対策で、腎不全患者さんがこれ以上増えないことを望む。