甲子園とメタボリックシンドローム

2007年5月10日

 メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策のストレス解消には、スポーツ観戦も有用である。

 2007年5月9日甲子園で阪神対巨人戦をグリーン席で観戦した。プロ野球を観戦したのは大阪球場での日本シリーズ、近鉄対広島戦の江夏が投げた伝説の一戦以来である。テレビで野球を見ることもあまりない。

 阪神対巨人戦は30年ぶりになる。以前と比べ巨人ファンが少ない。レフト側外野席8ブロックのうち3ブロックにしかいない。内野席は1塁側も3塁側も阪神ファンだ。

 5回裏阪神が同点にした頃から盛り上がってきた。メガホンを持つ人が20人に1人から3人に1人となった。最も盛り上がったのは8回表、藤川球児がマウンドに上がった時だ。球場がどよめいた。金本は不振で、今の阪神でスターと呼べるのは彼しかいない。

 球児の球は速い。153kmのビュンビュンとした速球がつづく。155kmの速球も出た。「きゅーじー」の声援が飛ぶ。野球を知らない妻が「右腕を上げ、体を丸めて、同じ動作を繰り返している」と言う。

 よく見ると、右肩を上げ右手をグローブの方に合わせ体をかがめる。つづいて体を真っ直ぐにして、胸を2回そらせる。顔を右に左に向け、間をおいて投球する。どの投球も、同じ動作を繰り返している。

 私は身を乗り出し、目を凝らせて藤川球児の投球だけを見つづけた。かがんだポーズはギリシャ彫刻か、ロダンの彫刻を思わせ美しい。体をかがめる動作は、立禅の息を吐ききる呼吸法に通じる。

 胸を2回そらす動作は、伸びきる気功法「練巧十八法の第2節左右開弓」に似ている。左右開弓は肩甲骨を近づけ背中の菱形筋の収縮作用を強化する方法だ。

 私は藤川球児と同じ動作を、観客席で小さく行った。心を落ち着かせ、精神を統一させ、一球一球ていねいに投げている。藤川球児の投球は、野球を知らない人にも一見の価値がある。

 9回表に異変が起きた。集中力が切れたのか、体をかがめる動作を省略して投球した。その途端、レフト前にクリーンヒットを打たれた。その後、リズムを崩して2点入れられ、5対4に逆転された。あの一球が、阪神の9連敗につながったのではと私には思えた。

 勝負は勝つ時もあれば、負ける時もある。敗因を探すのも面白い。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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