メタボリックシンドロームとペナルティ

2007年6月14日
 2007年6月13日、ホテル日航大阪で「内臓脂肪とメタボリックシンドローム」の講演をした。座長は大阪大学第2内科後輩の新宮良介君がしてくれた。31年先輩の88歳になられる阿部源三郎先生や、11年先輩の梶山康男先生も来られた。

 いつもは30~60人で60席しか用意していなかったが、104人も参加され、壁際や入り口の外まで立って講演を聴いてもらった。これまでの講演の中で最も多かった記録を抜いて、参加人数を大幅に更新したそうだ。栄枯盛衰、国の方針で私の人生は浮き沈みする。

 2008年4月からの保健指導に、2000~3000社が手を上げているらしい。積極的支援レベル、動機づけ支援レベルの1人当たりの各社の単価は、2~3万円と幅が狭くなっている。つい3ヶ月前には1人当たりの各社の単価は、3000円から5万円と16倍の開きがあった。

 対象者を2000万人とすると、5000億円の市場となる。新規参入企業が多いのもうなずける。新規参入は生命保険会社、スポーツクラブからIT関連、宗教法人まで幅広い。

 早いところは来年4月からの受診者に通知を出しているが、いざ実施になると問題が出てくるという。事業所が分散している所は保健指導に来てもらうのが難しい。被扶養者も対象となるが、小さな事業所では、家族の名前や住所を調べるのに手間がかかる。これからもいろいろ問題が出てきそうだ。

 健康日本21の関係者は「健康日本21の理念はよかった。成功しなかったのは、サイクリング道の整備をするなどのお金を国が全く出さなかったことと、ペナルティがなかったことだ」と話されていた。

 来年からの健診・保健指導では、実施率が低いとペナルティが科せられる。試算では6000人規模の企業では1億円、ある大きな企業では34億円のペナルティが科せられるらしい。ペナルティを払うより、従業員と家族の健康にお金を使う企業の方が多いと見込まれる。

 今日から高槻も梅雨入りとなった。昼食後、傘をさして歩きながら考える。
 韓非子の説く「信賞必罰」は、秦の始皇帝や聖徳太子の時代から変わらない。人間は誉めるか罰するかしないと動かない。健康日本21は賞も罰もなかった。特定健診・特定保健指導では罰はあるが賞がない。賞は民間の善意にゆだねるらしい。果たして人間は罰だけで動くのか。一抹の不安は残る。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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