農業とメタボリックシンドローム

2007年6月20日
 2007年5月29日国立社会保障・人口問題研究所(京極高宣所長)は都道府県別将来推計人口を公表した。

 2005年の総人口に占める老年人口の割合20.2%は、2035年には33.7%になると予想されている。現在老年人口の多い割合は、1位から島根県27.1%、秋田県26.9%、高知県25.9%の順であるが、2035年には秋田県41.0%、和歌山県38.6%、青森県37.5%の順になる。逆に老年人口の低い割合は、1位から沖縄県27.7%、愛知県29.7%、滋賀県29.9%の順になると予想されている。

 友人が公務員を辞めて、第2の人生では農業を営むと言う。私が1年前に会った時にした林住期(子どもや仕事から離れ、自由な時間を持って読書にふけり、自分の一生をふり返って人生とは何かを思考する時期)の話を聞いて決断したという。「親戚はせっかくいい地位にいて出世できるのに定年まで勤めたらと反対しているが、本格的な農業を始めるのは早い程いい」と友人は言う。友人の実家は農家で、農作業には慣れていると思うが私も責任を感じる。彼は以前から公務員を辞め農業をやろうと決めていて、誰かが背中を押してくれるのを待っていたのかもしれない。

 私の周辺には他にも2人農業をしたいという人がいる。自治体病院の要職にある人が退職して、実家で農業をしたいと言われていた。医師免許を持っておられるのだから勿体ないと思うが、苦労されて、一時的にでも医療を離れたいのだろう。

 公務員として相当な地位にいる友人も「退職後はものづくりをしたい。畑で野菜を作ってみたい」と言う。「いい天下り先は、いくらでもあるだろうに」と私は言ったが「もう人事にかかわることはやりたくない」と友人は言う。

 高槻も暑い日が続くようになった。昼食後はJR西日本沿いを、散歩しながらセンターへ帰っている。1日に人間でない生き物を、10以上は見るように心がけている。目を凝らすと、意外とたくさん生物がいる。用水路の水の表面が輪になって拡がるところにはアメンボがいる。小さな魚が数百匹すぐ見つかる。松下電器の構内を、黒い猫が獲物を捜すような目をこちらに向けて駆けて行く。スズメが2羽、電線に留まっている。カラスもいる。今日は珍しくアゲハ蝶とモンシロ蝶を見た。自然はいつの時代も変わらない。

 3人とも公務員だ。人と人との人間関係に疲れているのだろう。宮仕えに合っている人と合っていない人がいる。農作業は体を動かすので、メタボリックシンドロームの予防にいいかもしれない。自然と触れ合い、健康な体と心で老後を生きて欲しい。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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