文豪ゆかりの宿と動脈硬化性疾患予防ガイドライン

2007年7月 5日
 2007年7月2日、第40回大阪大学第二内科産業医学研究会がホテルグランヴィア大阪で開かれた。1つの教室の産業医の会としては日本最大規模である。

 特別講演は「動脈硬化性疾患予防のための新ガイドライン」で国際医療福祉大学の佐々木淳教授がされ、座長は廣部一彦先生がされた。廣部先生は研究室の2年先輩の男気のある先生で、産業医をされている。リスクが3つ4つ重複すると冠動脈疾患が36倍になるという旧労働省のデータも、廣部先生をはじめこの会の産業医の先生方が中心となって集められた。

 「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007」の作成委員長は、帝京大学内科の寺本民生教授がされている。今回のガイドラインの特徴はタイトルが示すように「治療」ではなく「予防」を主としていること、メタボリックシンドロームに関する項目を多く盛り込んでいることである。寺本先生とは何年か前、東京都千代田区御茶ノ水にある「山の上ホテル」で医学雑誌の対談をしたことがある。山の上ホテルは井上靖、松本清張、三島由紀夫、山口瞳など文豪ゆかりの宿として知られ、対談後そのまま宿泊した。

  ホテル内にある「ステーキガーデン」で食事をした。シェフの話では水上勉、安岡章太郎、田辺聖子さんらが来られ、田辺聖子さんは和食「山の上」の天ぷらも愛用されているという。田辺聖子さんは兵庫県伊丹市の私の近所に住んでおられる。伊丹第一ホテルで医師会の講演をしていただいた時、同級生の柴本茂樹君と控え室でお相手をした。私は文学のことを聞きたかったが、医師である私達のことを気遣って頂いたのか、鹿児島出身で医師をされていたという夫のことを30分間話しつづけられた。

 山の上ホテルには、文豪が愛用したというだけに何かがあった。落ち着いた木製の机、調度品、車の音一つしない静かな環境。大きな机にはスタンドに立てかけたボールペン。飲み物だけでポットの湯、お水、漢方薬のようなお茶と3種類あった。

  大作家達が愛用したという机の上には、一輪のバラの花が生けてある。どっしりとしたカーテン。白い壁。ここなら徹夜しても文章が書けそうな気がする。最近はFAXができて、缶詰で原稿を書くことは少なくなったそうだ。チェックイン2時、チェックアウト12時というのも嬉しい。

 縦書きの原稿用紙。浴衣姿でも寒くない室温。灰皿が二つ、その中にマッチ箱が入れてある。木製のベッドに木製の椅子。私の愛用している消しゴム付きの鉛筆も置いてある。午前2時まで各種料理をルームサービスで頼める。全てに行き届いている。「山の上ホテルで書き始めると一気に書けますよ」とNHK出版の池上さんが言っていた。山の上ホテルには不思議な力があった。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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