不眠とメタボリックシンドローム

2007年7月10日
 2007年7月5日、ニューオータニ神戸ハーバーランドで第8回ハーバー内臓脂肪フォーラム(門脇誠三会長)が開かれた。

 兵庫県小野市で開業されている先生が、肥満と睡眠について発表された。睡眠時間が少ない人は肥満が多く、睡眠が規則正しくなる入院生活で血中レプチン値が安定した。睡眠がレプチン(食欲を抑えるホルモン)やグレリン(食欲を増加させるホルモン)など食欲に関連するホルモンに影響する可能性があるという。

 2005年11月米国コロンビア大学のGangwischらは32~59歳の1万8000人を解析し、睡眠時間が4時間の人は7~9時間の人に比べ73%肥満になりやすいと報告している。2001年の厚生労働省(松澤班)の調査では、睡眠時間が8時間未満の人は8時間以上の人に比べ内臓脂肪型肥満の人が1.73倍多かった。米国と日本でともに睡眠が少ない人で肥満が73%増加するという数字の一致は面白い。

 米国スタンフォード大学では30~60歳の1000人を対象に、睡眠と食欲に関係するホルモンについて検討している。5時間眠る人は8時間眠る人に比べ、食欲刺激物質であるグレリンが14.9%多く、食欲抑制物質のレプチンが15.5%少ないことを報告している。

 グレリンは1999年に寒川賢治国立循環器病センター所長が発見された食欲刺激物質で、胃で産生される。2006年9月寒川先生はオ-ストラリアでの国際肥満学会で、基礎部門最高賞のヴェルツハイマー賞を受賞されている。2005年12月米国シカゴ大学は2日連続4時間しか寝ないと、10時間寝た場合に比べ、グレリンが増加しレプチンが減少することを報告している。不眠がつづくとレプチンが減り、グレリンが増加して内臓脂肪が蓄積する可能性がある。

 不眠がつづくとうつ病にもなりやすくなる。うつ病が増えると自殺も増える。では、どうすれば眠れるか。
 眠るにはこつがある。姿勢と呼吸だ。
 上を向いて寝る。そして、瞼(まぶた)を軽く閉じる。
 両手の掌(てのひら)をお腹の上に乗せ、臍の周りに親指と人差し指で円を作る。両肘と両膝を軽く曲げ、腕と脚(あし)の円を作る。これで両手、両腕、両脚による3つの円ができる。
 両手のひらをお腹に乗せると、毎日のお腹の膨らみ具合もわかる。食べ過ぎた日は手のひらの感覚でわかる。
 呼吸はゆっくりと長い時間をかけて、息を吐ききる。細く長く吐く腹式呼吸を繰り返す。高ぶっていた交感神経が鎮まり、迷走神経が優位となる。
 あとは好きな姿勢にすればよい。いつの間にか眠りにつく。早く目覚めた時は、同じ動作を繰り返す。
 それでも眠れないときは、軽い睡眠薬を半錠服用するとよい。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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