14面体の謎とメタボリックシンドローム

2007年11月15日
 2007年11月9,10日、神戸クラウンプラザホテルで第12回日本食物繊維学会が開催され、シンポジウムで「メタボリックシンドロームと食物繊維」の講演をした。

 特別講演は英国の栄養学者リベシー先生の「肥満とグリセミック・インデックス(GI)」だった。GI食の人では摂取エネルギー量が低下している。エネルギー摂取量の低下は主として炭水化物摂取量の低下によっていた。従って、GI食では体重が減少し、血糖およびHbA1cが改善すると述べられた。

 ある演者が大きい脂肪細胞の直径は150μmと言っていた。私は1979年から1983年にかけて、肥満者の脂肪細胞の大きさを測定していた。100例近く測定したが、最高に大きな細胞を持っていたのは160kgの人で平均直径が120μmだった。

 大きな動物が大きな脂肪細胞とは限らない。しゃぶしゃぶを食べるときは、脂を紙に包んで持ち帰り、顕微鏡で大きさを測定していた。牛の脂肪細胞も、豚の脂肪細胞も85μmでヒト脂肪細胞の80μmと差はなかった。ラット脂肪細胞も75μmで、動物の大小によって脂肪細胞の大きさはあまり変わらない。

 脂肪細胞の大きさで旨みが違うのではないかと、高級店のしゃぶしゃぶと、昼のランチでのしゃぶしゃぶの脂肪細胞の大きさを比べたが、違いはなかった。

 正常者の脂肪細胞は顕微鏡で観察すると円形だが、肥満者では多角形となっていた。球形の脂肪細胞は、大きくなると隣の脂肪細胞とぶつかり、そこに面が出来る。脂肪細胞がどんどん大きくなると多面体となり、空間を充填する。

 正多面体には正4面体、正6面体、正8面体、正12面体、正20面体がある。3次元空間を満たす最も表面積の小さい多面体は、いびつな5角形の面を持つ14面体だという。同じ体積なら正6面体より14面体の方が表面積は小さい。石鹸の泡は14面体となっている。自然界にも14面体は、蜂の巣、ザクロなど多い。

 昼食後、散歩しながらセンターへ帰る。紅葉した落ち葉の舞い散る季節になった。女瀬川から大きな黒い羽根を拡げたカラスが、松下電器構内の木に向かって飛んでいく。数十羽の雀が一斉に木から飛び立つ。川沿いの舗装道路には、灰色と白色の羽をした小さな鳥も歩いている。鳥類の脂肪細胞の大きさは哺乳類と一緒なのか、などとふと思う。暑くもなく寒くもなく、歩きやすい季節になった。

 過栄養で14面体となった脂肪細胞は、アディポサイトカイン分泌異常から、メタボリックシンドロームを起こしているのかもしれない。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

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