地球破壊とメタボリックシンドロームの概念

2008年1月 8日
 2008年の正月は、久しぶりに自宅で過ごした。年末からテレビは、地球温暖化に伴う環境破壊を盛んに取りあげている。氷山が崩れたり、島が沈没したりする映像を流し、CO2削減、エネルギー消費節約を訴えている。

 しかし、本質を突いた番組は少ない。わずかに2007年12月30日のサンデーモーニングで、コメンテイターが「世界の人口が増加している。発展途上国がアメリカ並みの生活をするとエネルギーを7倍消費する。食糧不足になると地域紛争や戦争が勃発する」と言っていた。

 2007年10月27日、ヒルトン東京での南カリフォルニア大学(USC)同窓会で、USC教授は「発展途上国の人口増加がつづいている。現在65億人いる世界の人口が、2100年には100億人を突破する」と言われていた。

 地球温暖化、食糧・水不足、エネルギー不足も根底に人口爆発、生活向上への欲望がある。10数%CO2を削減しても、人口増加や生活向上による資源消費の影響が遥かに大きい。テレビが取り上げないのは、地球温暖化対策は環境産業という大きな市場と結びついているが、人口爆発や贅沢への対策は市場に結びつかないからだろう。

 地球破壊はメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の概念と同じ構図にある。内臓脂肪蓄積を人口爆発・贅沢への欲望に、糖尿病・高脂血症・高血圧を地球温暖化・資源(食糧・水・エネルギー)不足に、動脈硬化を地球破壊・戦争に置き換えればよい。

 動脈硬化の危険因子である糖尿病、高脂血症、高血圧を治療することは経済と結びついていた。しかし、それらの基盤である内臓脂肪を減少させることは経済と結びつかなかった。内臓脂肪型肥満の概念は、2008年4月から始まる特定健診・保健指導で市場と絡むこととなり、ようやく脚光を浴びた。

 有識者の中には「国力アップのため、人口を増やそうとしている国がある。人間は生活水準を上げようとする欲望を持っており、先進国は現在の生活を下げようとはしない。利潤追求のみの社会では、疫病が流行るか戦争でも起こらない限り、人口爆発・発展途上国の先進国化は防げないのではないか」という意見の人もある。

 人類は人口爆発や贅沢への欲望に対して何もせず、戦争や疫病を待つことしかできないのか。人類の叡智とは、こんなものなのか!

 国際的には地球温暖化対策を手始めに、本丸の人口増加・資源消費増加対策を考えて地球破壊をくい止めなくてはならない。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

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