保健指導による行動変容とたばこ税依存社会

2008年1月22日
 2008年1月18日、東京での「特定保健指導会議」のため、伊丹空港からANA20便20F席に乗って羽田に向かった。

 いつもの全日空特製コンソメスープを飲みながら、青春歌謡グラフィティを聞いていると、都はるみの「アンコ椿は恋の花」が流れてきた。埼玉であった日本糖尿病学会の帰路、ふと羽田空港から伊豆大島に渡り、小さな宿の近くにあるスナックで、1人この唄を唄ったことがある。

 会議では、いくつかの施設から特定保健指導の効果が報告された。個別支援の方がグループ指支援に比べ、腹囲の減少はより大きい。個別・グループ支援とも運動に対する行動変容に最も大きな効果があり、食事にも大きな効果がある。飲酒とストレスに対する効果は少しあったが、喫煙の行動変容に対する効果はほとんどない。

 喫煙の行動変容は(1)たばこを止めるなどとんでもない(2)気になるがやっぱりたばこを続ける(3)そろそろ止めようかなと思う(4)止める習慣ができる(5)たばこを6か月以上止める、の5段階がある。特定保健指導による今の方法では行動変容の段階を上げることは難しい。

 私も喫煙指導をしたことがあったが、「自分の人生だ。好きなことをして、早死にをしてもかまわない。他人にとやかく言われる筋合いはない」と怒る人がたくさんおられた。これから禁煙指導をする保健師さんや、管理栄養士さんはたいへんだ。

 メタボリック教室の第45段と47段の「たばこ税依存社会」は波紋を呼んだ。喫煙者を減らすには、たばこを1箱1000円に値上げすることを提案した。私は400円でも500円でも1000円でもよかった。翌日の新聞に、たばこが1箱1000円になったらという記事が載っていた。

 ある新聞に「たばこの値上げに財務省とJTが反対している」と書いてあった。

 ある大きな医療法人の理事長に「今年4月から始まる行動変容による特定保健指導では、たばこを吸う人を減少させることは難しい。どうしてたばこを値上げできないのか?」と聞くと、「財務省が反対している以外にも、いくつかの要因がある」と言われた。

 新聞社は発行部数を減少させる可能性がある問題を、取り上げられないのかもしれない。テレビの影響力は大きい。たばこの値上げについて「与野党による討論番組」をしたら、いろいろなことが明るみに出て面白いかもしれない。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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