大阪府公立病院再編とメタボリックシンドローム

2008年2月22日
 2008年2月22日朝刊一面トップに「大阪府公立病院8地域に再編」の記事が載った。

 橋下徹大阪府知事の意向を受け、公立病院の医師不足や経営悪化に対応するため、大阪府内を8地域(大阪市、豊能、三島、北河内、中河内、南河内、堺、泉州)に分けて公立病院の再編に乗り出す。都道府県でも初のケースとなる。

 総論賛成だが、各論になると反対が出てくる。例として豊能地区にある4つの公立病院をあげてみる。豊能地区には市立池田病院(黒川正典院長)、市立豊中病院(片桐修一副院長)、市立吹田市民病院(椿尾忠博総長)、箕面市民病院(豊島博行院長)がある。

 市の人口と市民病院の病床数はそれぞれ池田市10万人(364床)、豊中市39万人(613床)、吹田市34万人(431床)、箕面市12万人(317床)となる。

 外部の者からみると、すんなり市立豊中病院が基幹病院となると考えるが、そう簡単にはいかない。市民は今の状態がいつまでもつづくと思っている。豊中市に決まれば、他の3市の市民から反対運動が起こるだろう。3市の市長は当然、次の選挙をにらんで反対にまわるだろう。

 ある県の市立N病院と市立A病院は、N市に新病院建設予定地も確保され合併寸前だった。N市44万人(324病床)、A市9万人(245病床)で両市・両市民病院の幹部は新病院建設に合意していた。しかし、A市の市民の反対と、それに同調した市長の反対で中止になった。

 同県の市立T病院、市立I病院、市立K病院の時もそうだった。T市22万人、I市19万人(423床)、K市16万人(283床)で各市の幹部では合意されていたが、市長が反対した。拮抗した力のある2つの市で、市立T病院が基幹病院になるとI市の市長は次の選挙で落選する、市立I病院が基幹病院になるとT市の市長が落選するためだ。

 大阪府豊能地区の各市立病院には津川真美子内科部長(市立池田病院)、林功医師(市立吹田市民病院)などメタボリックシンドロームのスペシャリストがいる。

 メタボリックシンドローム・糖尿病の専門医は基幹病院に集めるのか、それとも各病院にそのままいるのか。救急に関連する科(外科、整形外科、麻酔科、内科では循環器科・消化器科など)、産科、小児科のみを基幹病院に集めるのか等、課題は多い。

 橋下徹大阪府知事が本気で公立病院の再編を考えるなら「基幹病院を失う市民の不満をいかに解消するかがポイントになる。市民に十分説明し、市民に納得してもらうことが重要だ」と私はアドバイスする。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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