本屋と名医とメタボリックシンドローム

2008年5月 5日

   2008430日、厚生労働省は「糖尿病が強く疑われる人は、予備軍を含めて、全成人の5.6人に1人にあたる1870万人で、4年前に比べて約250万人(15.4%)も増えた」と公表した。

 

平成1811月「国民栄養・健康調査」で、男女計4296人の血液検査が実施されている。HbA1c6.1以上の糖尿病が強く疑われる人は約820万人、HbA1c5.6以上6.1未満の可能性が否定できない予備軍は1050万人となっている。

 

前回の平成16年の調査では糖尿病が強く疑われる人とその予備軍は約1620万人だった。厚労省は「高齢化社会が急速に進んでいることに加え、運動不足や高カロリーの食習慣が影響している」と分析。

 

4月にスタートした、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の考え方を取り入れた「特定健診・特定保健指導」の重要性を強調している。

 

インターネットに押されて本離れが指摘されているが、三宮センター街にはジュンク堂、福屋書店、そごう神戸に紀伊国屋など大きな本屋がたくさんある。本屋では表紙とタイトルを見るだけでも面白い。

 

帰宅時立ち寄ると名医の本が置いてあった。肥満・糖尿病・メタボリックシンドロームの名医とはいったい何だろう。

 

私が大阪大学に勤務していた頃、外来時間は1人15分だったが、自治体病院では6分だった。入院患者も阪大では肥満患者さん4人だが、自治体病院では16人受け持った。大阪大学の肥満外来は月刊誌で全国1位となり、入院患者さんも東京、福岡、高知など遠方の人で占められたこともあった。

 

しかし、大学では名医だった人も、外に出て名医だとは限らない。私は大学では患者さんとゆっくり話をすることができたが、自治体病院では必ずしも満足のいく時間がとれなかった。

 

大学病院では時間が十分あり、患者さんの生い立ち、家族、仕事、腹部CT像、脂肪細胞の大きさ、全てを把握していた。しかし、自治体病院では体重、血圧測定と処方箋を書くだけで時間はなくなり、じっくり話もできなかった。とても名医とは呼べなかった。

 

時間があっても名医とはならない。肥満・糖尿病・メタボリックシンドロームでは、保健師、看護師、管理栄養士、健康運動指導士などコメディカルの協力が必要だ。

 

私は「名医=体験・技術×時間×スタッフ」だと思う。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

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