本屋と名医とメタボリックシンドローム
2008年4月30日、厚生労働省は「糖尿病が強く疑われる人は、予備軍を含めて、全成人の5.6人に1人にあたる1870万人で、4年前に比べて約250万人(15.4%)も増えた」と公表した。
平成18年11月「国民栄養・健康調査」で、男女計4296人の血液検査が実施されている。HbA1cが6.1以上の糖尿病が強く疑われる人は約820万人、HbA1cが5.6以上6.1未満の可能性が否定できない予備軍は1050万人となっている。
前回の平成16年の調査では糖尿病が強く疑われる人とその予備軍は約1620万人だった。厚労省は「高齢化社会が急速に進んでいることに加え、運動不足や高カロリーの食習慣が影響している」と分析。
4月にスタートした、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の考え方を取り入れた「特定健診・特定保健指導」の重要性を強調している。
インターネットに押されて本離れが指摘されているが、三宮センター街にはジュンク堂、福屋書店、そごう神戸に紀伊国屋など大きな本屋がたくさんある。本屋では表紙とタイトルを見るだけでも面白い。
帰宅時立ち寄ると名医の本が置いてあった。肥満・糖尿病・メタボリックシンドロームの名医とはいったい何だろう。
私が大阪大学に勤務していた頃、外来時間は1人15分だったが、自治体病院では6分だった。入院患者も阪大では肥満患者さん4人だが、自治体病院では16人受け持った。大阪大学の肥満外来は月刊誌で全国1位となり、入院患者さんも東京、福岡、高知など遠方の人で占められたこともあった。
しかし、大学では名医だった人も、外に出て名医だとは限らない。私は大学では患者さんとゆっくり話をすることができたが、自治体病院では必ずしも満足のいく時間がとれなかった。
大学病院では時間が十分あり、患者さんの生い立ち、家族、仕事、腹部CT像、脂肪細胞の大きさ、全てを把握していた。しかし、自治体病院では体重、血圧測定と処方箋を書くだけで時間はなくなり、じっくり話もできなかった。とても名医とは呼べなかった。
時間があっても名医とはならない。肥満・糖尿病・メタボリックシンドロームでは、保健師、看護師、管理栄養士、健康運動指導士などコメディカルの協力が必要だ。
私は「名医=体験・技術×時間×スタッフ」だと思う。