短時間正社員制度と医師不足
2008年5月3、4日、息子を連れて中国縦貫道を行きは4時間、帰りは6時間半かけて広島県庄原市へ父の墓参りに行った。
2007年12月31日、紅白歌合戦で聴いたすぎもとまさとの「吾亦紅(われもこう)」に共感した。「・・仕事に名を借りた ご無沙汰 あなたに あなたに 謝りたくて・・」。日直などで土日つづけて休めず、休暇を取るのも難しくて、病院勤務医時代なかなか広島の実家に帰省することができなかった。
暑くもなく寒くもない季節で、父が亡くなって7年、初めて墓の周囲に生えてきた草を取って掃除をした。墓の後ろに紅色の椿の花がポトリと落ちていた。木にはまだ紅色の花が少し残っており、これまで椿の木が立ってあることにも気づかなかった。
「先祖を大切にしていると、子孫を守ってくれるんだね」息子の不意の言葉に戸惑った。息子を連れてきた甲斐があった。親が祖先を大切にすることで、子供も祖先を大切にする気持ちを持ったのだろう。
2008年3月21日厚生労働省は各都道府県知事宛に「病院勤務医の労働環境改善の推進について」の通知を出した。病院勤務医の負担軽減のため、短時間正社員制度に関する助成など支援策が載っている。
短時間正社員とは、所定労働時間が短く残業が基本的にない正社員を言う。育児などライフスタイルが多様化した社会において、少しでも女性医師など働きやすいようにして、医師不足を解消しようというものである。
メリットとして「医師が育児・介護、自己啓発、社会活動をしながら働き続けることが可能になり、優秀な有能な人材の職場への定着や人材確保を容易にし、医療機関の体制が安定化する」としている。
こういう考え方を持っている人がいるのは嬉しい。日本人は働き過ぎだ。長時間労働、多報酬を望む医師ばかりではない。多様な価値観を持って生きようとしている医師もいる。
短時間正規雇用医師はパート医師と異なり、正規医師と同じように退職金、昇進、育児休業、社会保険があり契約期間も無期となっている。就業時間に対応した待遇が得られ、育児で病院を辞めざるを得なかった女性医師に朗報だ。
短時間正規雇用医師制度は短期的な対策で、根本的な医師不足対策ではないが、ライフステージに応じた多様な働き方の実現に役立つかもしれない。