選挙と糖尿病網膜症
2008年9月1日、福田康夫総理が辞任会見をされた。健康上の理由かと聞かれ「体は目が少し見えにくくなったことぐらいで、辞任の理由ではない」と答えられていた。
選挙を受ける人にとって、視力の低下は命取りになることがある。糖尿病網膜症などで目が見えないと、支援者や知り合いの有権者と道ですれ違ったとき見向きもせず、そのまま通りすぎることになるかもしれない。支持者は「もう私のことは忘れられてしまっているのではないか」と裏切られた気持ちで、選挙の応援をしたり投票をしたりしなくなる可能性がある。
日本人の失明の1位は糖尿病網膜症で、糖尿病腎症や糖尿病神経症と同じく小さな血管の障害によって起こる。網膜はカメラに例えるとフィルムにあたり、フィルムの感度が悪くなったり、破損したりする状態となる。初期には眼の網膜の出血、白斑などが、進行すると新生血管が生じ、硝子体出血や網膜剥離を起こし、視力障害を起こしてくる。
眼底検査では正常、単純網膜症、増殖前網膜症、増殖網膜症の4期に分類される。単純性網膜症では血糖コントロールなど内科的治療を行う。増殖前網膜症や早期増殖網膜症では眼科医の治療が必要で、失明予防のため光凝固療法を行う。硝子体出血や網膜剥離をきたしている場合は手術を考慮する。
古来、平安時代に栄耀栄華を極めた藤原道長より現代の今太閤田中角栄総理、大平正芳総理に至るまで、権勢を誇る人に糖尿病は多い。これは付き合いのための宴会つづきによる過食や、権力闘争に明け暮れるため絶えずストレスに身をさらされているということも関係するだろう。
政治家は自分の病気を隠すことが多い。知人の病院長は要職にある人が進行した癌で入院されたとき、家族と支援者から「良性の疾患であると発表して欲しい」と懇願されたという。「進行癌を良性腫瘍と言ってはいけない。要人が亡くなった後、何故殺したのかと何通も手紙が来て、中にはカミソリまで入っていたものがあった」と言われた。
政界に限らず、企業などにおいても指導者が糖尿病で視力障害を起こす場合があるだろう。視力が落ちていることを知らない部下は、すれ違っても挨拶されないと「自分は上司に相手にされていない、見捨てられている」と誤解するかもしれない。
日本の社会では宴会がつきものだ。政界、財界、行政、メディア、スポーツ界などトップに立つ人は、生活習慣を変えることが難しい。糖尿病になった場合は、糖尿病網膜症から視力が落ちないよう宴会など上手に付き合う必要がある。