肥満・糖尿病と臨床栄養
2008年10月10日の第30回日本臨床栄養学会のシンポジウム1で話すタイトルは「肥満症治療ガイドラインにみる食事療法の現状と展望」だ。
食事の量に関してはコンセンサスが得られているが、質に関してはコンセンサスが得られていない。エネルギー制限と蛋白質・ビタミン確保は世界共通の認識だが、低炭水化物食がいいのか低脂肪食がいいのか、どんな食品がよくないのか未だ明らかではない。
糖尿病カレントライブラリー⑧「糖尿病の食事療法・運動療法」(文光堂2007年)で、京都大学津田謹輔(きんすけ)教授が「炭水化物の質と量」の中で砂糖(蔗糖)問題について、踏み込んだ表現をされている。
「従来アメリカでは砂糖は炭水化物の一つとして扱えばいいので特別制限はいらないと考えていた。糖尿病で砂糖を制限しないといけないのは神話であるとさえいっている。わが国のガイドラインでは、厳格な蔗糖摂取制限にこだわる必要はないが、できるだけ蔗糖を炭水化物に切り替えることが望ましいとやや歯切れの悪い記載になっている。
2006年のADA(米国糖尿病学会)のステートメントによれば、むしろ日本のガイドラインの表現に近くなっている。・・・」と書いてある。
食品の分野は他の分野と同様に、莫大な利害が絡んでいるので、大きな権限を持つ所には絶えず脅迫と圧力がかかってくる。つい10年前までは、米国の大企業の圧力で砂糖に不利な論文は取り上げられなかった。大企業の方向転換で、砂糖に不利な論文も取り上げられるようになっている。
米国留学生に聞くと「穀物を売るため、炭水化物を多く摂取するようロビーイストが米国農務省に働きかけていた」と言う。理想的な食事は、国の政策によって左右されている可能性がある。真実は自分の目で確かめるか、経験豊富な人に聞くのがいい。
2008年9月22日月曜日、緑を求めて江坂から服部緑地に行った。西駐車場から褐色の藻が一面に浮いている蓮池の周囲を歩いて行くと「こどもの楽園」があった。午後5時40分の公園は、小さな子ども連れの親子が約150人いた。お父さんは2人しかいない。
日本のお父さんは育児休暇も取れず、働き続けているのか。平凡な日常の中に幸せは存在する。孫を連れたお祖母さんはいるが、お祖父さんの姿はない。可愛い盛りの小さな子と遊べるのは女性しかいない。平均寿命の男女差は縮まりそうもない。
元気な幼い子供達を見ていると、業界の思惑に左右されない肥満・糖尿病の食事療法を確立することが必要だと思った。