温故知新と日本肥満学会
2008年10月17,18日、大分全日空ホテルで第29回日本肥満学会(大分大学第1内科教授吉松博信会長)が開催され、「温故知新」がスローガンとなっている。
孔子曰わく「故(ふる)きを温(たず)ねて新しきを知れば、以って師と為すべし」。「昔のことをじっくり調べ、新しいことを知れば、人の師となることができる」という意味の、論語に出てくる言葉である。
特別講演は米国ブレイ教授の「肥満:過去と未来」で、共立女子大井上修二教授が座長をされる。ブレイ教授はヴィレンドルフ賞(国際肥満学会最高賞)を最初に受賞された方で、米国肥満学会をロックフェラー大学のハーシュ教授とともに創立され、「肥満の生き字引」と言われている。
ブレイ先生はWHO(世界保健機関)の肥満症ガイドラインの委員をされていた。国際肥満学会は国際的には生理学部門の1分野として始まり、井上先生も吉松先生も私も生理学をされているブレイ先生の門下生だった。ブレイ先生の特別講演では、メールで送った門下生の人達の顔写真が出てくるかもしれない。
特別シンポジウムは「肥満研究のパイオニアたち、そして今」となっている。初代日本肥満学会理事長の大村裕九州大学名誉教授、嶋津孝愛媛大学名誉教授、新島旭新潟大学名誉教授が出席される。
日本肥満学会が設立された30年前は、生理学が肥満研究の全盛期だった。この3人でNature、Scienceの超一流雑誌に15論文載せられている。30年後の現在は、生理学から分子生物学が中心となっている。
日本肥満学会のコンセプトは「できるだけ世俗的なものは排除し、アカデミックな学会にする」というものだった。そのため、国際的にも評価されている九州、四国の先生方にも参加してもらった。大村先生、嶋津先生らの参加で格調の高い学会になることができた。
10月1日帰宅時、服部緑地の中央駐車場からカシノキの林を抜け、円形花壇に行った。薄紫のラッパの形をした花がきれいだ。雨でない日は緑の中を散歩するようにしている。雲一つない夕焼け空を、4羽の鳥が大きな羽をくの字型に拡げて羽ばたいていく。西の空から東の空へ飛行機が飛んでいく。
若いお母さん4人が横1列になって、ベビーカーを押しながら通り過ぎて行った。この赤ん坊が大きくなった30年後には、どんな学問が肥満研究の主流になっているのだろうか。歴史の積み重ねの上に、新しい創造が生まれる。