肥満税と糖尿病・メタボリックシンドローム

2008年12月28日

    20081225日、厚生労働省は平成19年の「国民健康・栄養調査」で糖尿病が成人5人に1人であることを公表した。

 

糖尿病が疑われる成人は890万人、予備軍は1320万人となっている。予備軍を含めると2210万人で、平成14年の1620万人に比べ5年間で1.4倍、平成9年の1370万人に比べると10年間で1.6倍になっている。

メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が強く疑われる人と予備軍(4074歳の成人)は2010万人で、前年に比べ70万人増加している。

 

26日米国シカゴ在住の人と、肥満の話をした。

「米国では子供の肥満がものすごく増えている。子供の通っているシカゴの小学校では2年前から、M社のハンバーガーとK社のフライドチキンを止め、ヘルシーな食事に変わった。

肥満の子供がそのまま大人になったら、2大疾患の心筋梗塞と糖尿病が増え医療費が増加するので、危機感を持ったFDA(米国食品医薬品局)は11月から、大々的にキャンペーンを行っている。

肥満税も盛んに論議されている。航空会社のU社では"50kg100kgの人では燃料費が異なるのに、同じ料金というのはおかしい"ということから、肥満の人にはチャージをかけることが検討されている」と言う。

燃料費を考えてチャージを取るのなら体重の絶対量が基準になるが、肥満予防という面から考えると肥満かどうかが基準となる。

 

20061月「次世代に向けた肥満およびメタボリックシンドロームの予防対策」について医療関係者にアンケート調査を行なった所、70名から解答があった。

大部分は食事、運動に関するものだったが、税金を課する対策を考えている人もいた。「カロリーの高いスナック菓子やチョコレートなどに税金をかける(検査技師)」「アルコールによる肥満を防止するため酒税を上げる(看護師)」「自らの目標体重および腹囲を申告し、目標をクリアできれば所得税の控除が受けられるようにする。下げれば下げるほど控除率を上げていく(医療事務)」などの意見が寄せられた。

 

法律による肥満規制は、古くはローマ帝国時代にさかのぼる。ローマ時代、豪華な食事で肥満が増加し、食事に費やされる金額を制限する法律や、宴席での人数を制限する法律が施行されている。1920年代、スウェーデンでは肥満の人に対し「体重が200ポンド(91kg)以上の人は1ポンドにつき1ドル徴収する」という税制を行おうとした。

 

私は肥満者に課税するのではなく、肥満の要因となるものに課税する方がよいと考える。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

著作権について