米国自動車産業と肥満・2型糖尿病
2009年1月5日、米調査会社オートデータは2008年の米国における新車販売台数を公表した。
1位はゼネラル・モーターズ(GM)293万台で前年比22.7%減、2位はトヨタ自動車222万台で15.4%減、3位はフォード・モーター191万台で20.5%減、4位はクライスラー145万台で30.0%減、5位はホンダ143万台で7.9%減となっている。
1月6日、米国ケンタッキー州在住の人と肥満の話をした。ケンタッキー州では肥満が増加し、社会問題となっているという。糖尿病発症率が圧倒的に多いのはジョージア、ケンタッキー、アラバマ、テキサス、ルイジアナなど南部の州に偏っている。これら南部の州は、BMI30以上の肥満者が20%以上と多い。
「農業地帯のケンタッキーは、どこのインターチェンジを降りても同じようなファーストフード店が並んでいる。太りすぎて歩くことができず車椅子に乗り、ファーストフード店で酸素吸入をしながら食べている超肥満も見かける。
ケンタッキー州は全米肥満No1になったことがある。ニューヨーク州やカリフォルニア州のように各国の多様な料理店がない。ファーストフード店での画一的な高脂肪食と砂糖の多い炭酸飲料摂取過剰が、肥満の多い原因ではないか」と言う。
米自動車3大メーカーは、経営危機に陥っている。肥満、糖尿病、高血圧の増加がビッグスリーの経営を圧迫している。自動車1台当たり、医療費など福利・厚生費が1500~2000ドルかかっているという。
自動車産業に勤める従業員と退職者に肥満が増えると、肥満とその合併症への医療費は増加し、自動車の価格に上乗せされるので、車の価格が高くなり車が売れなくなる。肥満対策は経営危機にある米国自動車産業にとって重要だ。
米国では2型糖尿病が増加し、1人当たりの治療費も高額になっている。糖尿病による経済負担は年間1320億ドルで、医療費の10%を超えている。
糖尿病に処方される薬剤も種類が増え、1処方当たりの処方の平均コストは56ドルから76ドルに増加している。FDA(米国食品医薬品局)は糖尿病薬に費やすコストが、心筋梗塞などの疾病や死亡率にどれだけ効果があるか検討し、医療費の削減をはかるという。
文明の進歩、特に自動車の発達は米国に多大な利便をもたらした。しかし、運動不足・過剰栄養によって肥満・2型糖尿病を増加させ、米国産車の価格を押し上げて競争力を低下させている。1月20日発足するオバマ新政権は、どんな肥満対策を立てるのか興味深い。