米国自動車産業と肥満・2型糖尿病

2009年1月 8日

   200915日、米調査会社オートデータは2008年の米国における新車販売台数を公表した。

1位はゼネラル・モーターズ(GM293万台で前年比22.7%減、2位はトヨタ自動車222万台で15.4%減、3位はフォード・モーター191万台で20.5%減、4位はクライスラー145万台で30.0%減、5位はホンダ143万台で7.9%減となっている。

 

16日、米国ケンタッキー州在住の人と肥満の話をした。ケンタッキー州では肥満が増加し、社会問題となっているという。糖尿病発症率が圧倒的に多いのはジョージア、ケンタッキー、アラバマ、テキサス、ルイジアナなど南部の州に偏っている。これら南部の州は、BMI30以上の肥満者が20%以上と多い。

「農業地帯のケンタッキーは、どこのインターチェンジを降りても同じようなファーストフード店が並んでいる。太りすぎて歩くことができず車椅子に乗り、ファーストフード店で酸素吸入をしながら食べている超肥満も見かける。

ケンタッキー州は全米肥満No1になったことがある。ニューヨーク州やカリフォルニア州のように各国の多様な料理店がない。ファーストフード店での画一的な高脂肪食と砂糖の多い炭酸飲料摂取過剰が、肥満の多い原因ではないか」と言う。

 

米自動車3大メーカーは、経営危機に陥っている。肥満、糖尿病、高血圧の増加がビッグスリーの経営を圧迫している。自動車1台当たり、医療費など福利・厚生費が15002000ドルかかっているという。

自動車産業に勤める従業員と退職者に肥満が増えると、肥満とその合併症への医療費は増加し、自動車の価格に上乗せされるので、車の価格が高くなり車が売れなくなる。肥満対策は経営危機にある米国自動車産業にとって重要だ。

 

米国では2型糖尿病が増加し、1人当たりの治療費も高額になっている。糖尿病による経済負担は年間1320億ドルで、医療費の10%を超えている。

糖尿病に処方される薬剤も種類が増え、1処方当たりの処方の平均コストは56ドルから76ドルに増加している。FDA(米国食品医薬品局)は糖尿病薬に費やすコストが、心筋梗塞などの疾病や死亡率にどれだけ効果があるか検討し、医療費の削減をはかるという。

 

文明の進歩、特に自動車の発達は米国に多大な利便をもたらした。しかし、運動不足・過剰栄養によって肥満・2型糖尿病を増加させ、米国産車の価格を押し上げて競争力を低下させている。120日発足するオバマ新政権は、どんな肥満対策を立てるのか興味深い。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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