初春大歌舞伎とメタボリックシンドローム
2009年1月12日成人の日、大阪松竹座に初春大歌舞伎を観に行った。
宗右衛門町に駐車し、道頓堀に行くと和服姿の新成人がいた。4時の開演まで1時間10分あり、外は寒いので法善寺横町の浮世絵ショップに入り風呂敷を買った。風呂敷は結び方でいろいろなバッグになる。丁度店内に、有名作家が来ていた。黒い短いコートに、ラフな黒っぽいズボンをはいていた。有名人に街で偶然出会うと、得をした気分になる。
歌舞伎観劇は初めてだ。鶴屋南北作、通し狂言「霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)―亀山の仇討」5幕10場を、松竹座1階6列23番で観た。南北の作品には東海道四谷怪談などがある。観客の8割は女性客だった。出演者が全員男性なので、女性客が多いのか。
「霊験亀山鉾」は忠臣蔵の前年、亀山で実際にあった仇討ちを題材にしている。藤田水右衛門と八郎兵衛の二役を片岡仁左衛門が演じている。権謀術策の限りをつくし、善人を次々と返り討ちにしていく "悪の華" の水右衛門が主役になっている。
鶴屋南北は亀山仇討ち話を3つ創作している。縦糸は亀山の仇討ちで、やはり当時、実際にあった八郎兵衛の刃傷沙汰話を横糸にして「霊験亀山鉾」はできている。太い縦糸に、その年の出来事を横糸にして話を構成すれば、いくらでもストーリーが書けそうだ。
40数年前、庄原格致高校時代、図書室に置いてあった「井原西鶴全集」の"好色一代男"や、「近松門左衛門全集」の"曾根崎心中"など、江戸時代の全集を読んでいた。
私の「メタボリック教室」もメタボリックシンドローム、肥満、内臓脂肪を縦糸に、現在起こっているトピックスを横糸にして書いている。この手法は江戸時代の歌舞伎の脚本づくりに似ている。高校時代に読んだ江戸時代の作品全集が、私の頭の片隅に残っていたのかもしれない。
棺桶を取り違えるシーンで、太めの狼が出てきた。「太った狼は見たことがない」とつぶやくと、「太った犬はいるわよ」と妻に言われ、成る程と思った。
映画は完成したものだが、舞台は生だ。「松嶋屋!」「成駒屋!」と声がかかる所など生の魅力だ。逆に、いつアクシデントが起こるかわからない。壊れた棺桶から水右衛門が出てくるシーンで、仁左衛門が壊れた棺桶の板の上で少しよろけた。滑って転倒し、骨折しないかヒヤリとした。
歌舞伎は古典芸能だけあって完成度は高い。歌舞伎の手法は時代を超えて生きており、創作する人の参考になる。教育・読書はすぐに役立たないかもしれないが、人生のいろいろな局面で知らないうちに役に立っている。