公立病院民営化とメタボリックシンドローム

2009年1月15日

   2009113日、大阪市は不良債権123億円を抱える市立4病院に、平成20年度一般会計から130億円の繰り入れを検討していることを公表した。 

大阪市総合医療センター、北市民病院、十三市民病院、住吉市民病院の4病院は繰り入れをしないと、破綻一歩手前の経営健全化団体へ転落する。だが、大阪市は財政難のうえ、金融危機が加わり厳しい状態にある。大阪市は収支改善のため北市民病院を民間医療機関に移譲する計画を進めているが、それでも健全化基準を満たすには足りないだろう。

 

2008年春、大阪での会合のあと公立病院再編に携わっている大物の事務系の方に「公立病院は無くなるかもしれない」と、さりげなく言われた。一部の公立病院は無くなると思っていたが、全ての公立病院が無くなるなど考えてもいなかったので驚いた。

 

2008年夏、街でばったり市民病院の部長と出会った。「公立病院がゼロになるかもしれない」と話をすると「その方がいいですよ。民営化された方が経営も楽になる」と、あっさり言われてしまった。

「民営化されれば、不採算部門をしなくてよくなる。この病院はガン、あの病院はメタボリックシンドロームといったように、それぞれの病院が得意な分野に特化することができる」と言う。

その部長のいる市民病院への補助金は8%だ。全国の公立病院への平均補助金16%に比べ低い。東京都の公立病院への補助金30%に比べると遥かに低い。他の市民病院の院長に聞くと「補助金は20%あり、経営はなんとかやっていけてる」と言う。

 

テレビでは、1つの公立病院が閉鎖になるというだけで、大騒ぎをしている。全体的な議論はない。一気に公立病院が民営化されると、いろいろな矛盾点が出てくるだろう。

都会では代わりの病院があればいいが、問題は地方の病院だ。地方の自治体病院が無くなれば、一番困るのは地方の住民だろう。救急、産科、小児科などの不採算部門は、警察や消防と同じように別個の収支にして残す必要があるだろう。

 

地方病院勤務医の都会での開業ラッシュがつづいている。ある地域の新規開業の半数以上は、地方病院勤務医となっている。21世紀になり、大学病院勤務医は40%減少、病院勤務医は15%減少し、それとほぼ同数の医師が都会の開業医になっている。

 

大学の研究・教育崩壊、地方病院の診療崩壊をくい止めるには、どうすればよいのだろうか。厚労省からも医師会からも一目(いちもく)置かれる人物の登場が待たれる。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

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