新臨床研修制度と地域医師偏在
2009年2月18日、「臨床研修制度」の見直しをしている厚生労働省と文部科学省の検討会は、都市部集中解消への提言をまとめた。
見直し案では"都道府県ごとに研修医の募集定員の上限を設ける。都道府県単位だけの募集の設定では、県庁所在地など地方都市の大病院に研修医が集中してしまい、地域内での医師偏在が解消しない可能性があるので、病院単位でも募集定員枠を制限する"としている。
新臨床研修制度は、研修医の都市への集中や地方病院の医師不足の一要因となっている。出身大学の都道府県に残った研修医は、文部科学省の2008年度の調査で全国平均49.1%と減少し、25%以下しか学生が残らない県もある。
地域による医師の偏在は加速している。愛媛県を例にとると、2003年3月から2007年7月の間に病院常勤勤務医は15人減少している。西日本各地の病院勤務医が近畿の大都市圏でビル開業をし、大都市圏の開業医は飽和状態となっている。
同じ県内でも医師偏在は拡大している。県庁所在地のある松山地区の病院勤務医は45人増加しているのに対し、八幡浜地区17人減、宇和島地区6人減、新居浜地区24人減、宇摩地区13人減と松山地区以外は計60人減少している。
ある厚労族の国会議員の方は「開業医の先生は10日に1度来られるが、勤務医の先生は一度も来られたことがない。医師は不足しているという人と、医師は過剰だという人がおられる。医師の話をみんな聞いていたら、何もできなくなる。勤務医の先生とも話をしてみたい」と言われた。
友人は「日本医師会は、大都市の過剰となった開業医を抱えており、医師偏在は言えるが、医師不足に対しては強く言い難いのではないか」と言う。
厚労省・文科省の委員会では"地域への医師派遣機能を持つ大学病院の募集枠を優遇する"ことも提言している。研究・教育を担っている大学病院の医師確保も必要だ。
「日本の医師数は不足している。医師の養成には年数がかかる。まず、大学の医学部定員数を大幅に増やす必要がある。人口構成を考慮すると20年後には高齢化が止まり、医師の必要数は減少するだろうが、その時に医学部の定員を減らせばよい。
地方の医療崩壊を防ぐには、県庁所在地以外の地域の医師が立ち上がり、地元出身国会議員に現状を知ってもらうことが最低限必要だ。地元住民やメディアと協力して、医師不足・医師偏在対策で国を動かすとよい」と私は考える。