アカデミー賞と肥満・糖尿病大国インド

2009年2月28日

    2009222日、映画界最高の栄誉とされる米アカデミー賞が発表された。

外国語映画賞に「おくりびと」、短編アニメ賞に「つみきのいえ」と、日本映画がダブル受賞した。作品賞にはインド社会を描いた「スラムドッグ&ミリオネア」が選ばれた。 

 

  日本人はインドを「仏陀、ヨガ、貧困の国」と見がちであるが、インドは「IT、医療観光、肥満・糖尿病大国」でもある。私が以前、インドに行ったとき、丁度マイクロソフト社のビルゲイツ会長、日本の電器メーカーの副社長や常務が来られていた。

 

  欧米から、多くの人が心臓カテーテル治療などに行っている。インドの治療費は安く、旅費を払っても何分の1かの費用ですみ、インド観光をすることもできる。米国で経験を積んだ医師が治療をしており、インドの医療技術レベルは高い。

松澤佑次日本肥満学会会長が、インドのゴールデン賞を受賞された時「インドの医療機関を見学したが、心臓治療や整形外科治療など日本より設備の整った病院がある」と言われていた。

 

国際糖尿病連合(IDF)は2007年、インドの糖尿病は4100万人となり、中国の4000万人を抜いて世界一の糖尿病大国になったと発表した。3位は米国で、日本は6位となっている。

258日に開催された第5回アジア・オセアニア肥満学会で、BMI30以上の肥満は都市部が44%、農村部が22%だと報告されている。インドの肥満は日本の肥満23%に比べ著しく多い。富裕層・中間層に肥満が多く、貧困層はやせている。インドでは肥満・糖尿病に対し、日本の健診・保健指導のような国家的レベルでの対応がなされていない。

 

224日帰宅時、どんよりとした雲空の下、コートの襟をたてて大阪府豊中市猪名川の堤防を散歩した。ニット帽に手袋をした小柄な老人が、ラジオのボリュームを上げて通り過ぎていく。中年男性が、白に黒のまだら模様のある犬を連れて散歩をしている。

午後550分から1人土手に佇み、夕暮れ時の川を眺めた。大きな送電塔が5本立ち、水道管が川を超えて兵庫県尼崎市に向かっている。川幅の広い所では流れは緩やかで、狭い所では流れが急になっている。人生も川と同じだ。急ぐ時もあれば、のんびりする時もある。故郷、広島県庄原市を流れている西城川を思い浮かべた。

徐々に暗くなり、対岸の家やアパートの部屋に明かりが灯り始めた。堤防沿いを走る車がヘッドライトをつけ、手前の道を赤いテールランプをつけた車が次々と走り去っていく。午後610分、辺りはすっかり暗くなっていた。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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