田舎暮らしと小学時代の想い出

2009年3月 2日

    2009226日、診察室に田舎で暮らす本を持って入って来られた受診者がいた。「老後は、田舎の川のそばで暮らしたい。できれば海か湖が近い所がいい」と言われる。

定年後の年金生活を田舎で暮らしたいという人も多い。故郷、瀬戸内海の島、暖かい沖縄、琵琶湖の畔、登山ができる長野県、健康相談が人生相談になることもある。

 

夕方帰宅時、前日と同じ兵庫県尼崎市藻川の堤防へ散歩に行った。川沿いは空気がいい。大きく息を吐き出し、冷んやりとした戸外の空気を胸一杯吸った。上空には白い飛行機雲が6本見える。飛行機が1機、伊丹空港から北へ向かい、南に旋回しながら昇っていく。

対岸の河原では、成人8人が野球の練習をやっている。メタボリック対策のためか、トレーナーを着た中年男性がジョギングをし、隣を過ぎ去っていく。中年女性が2人連れだって、おしゃべりをしながらウォーキングをしている。

 

帰宅すると広島県庄原小学校時代の同級生から、クラスメートの訃報がパソコンメールに入っていた。小学1、2年の時仲良しだった友人が、224日午後550分亡くなっていた。ふっくらとした四角い輪郭の顔をして、目は細くいつもニコニコしていた。還暦の年になると、同級生など訃報のメールが多い。

 

故人が転校する前、よく家に遊びに行っていた。彼の家の近くには西城川が流れており、水たまりにはメダカがたくさんいた。永い眠りにつくとき、脳裏をよぎったのは故郷の山や川だったのか、残された家族のことだったのか。

彼とは、クラスでトップを競っていた。彼はドリル問題をよくしていた。私は逆に「授業をしっかり聞いて、教科書を完全にマスターすればいい」という父の教育方針で、参考書と問題集を買うことはなかった。

 

父は小池書店、白部書店の庄原で2軒しかない本屋で、図鑑や童話・偉人伝をよく買ってきてくれていた。草花図鑑、動物図鑑、乗物図鑑などあり興味のある所を見ていたが、地理図鑑の火山の構造など面白かった。

本には買った順に1番から100番台まで番号を付け、順番に本棚に本をしまっていた。本を積み上げる人がいるが、下になった本は「死に本」になってしまう。利用されにくくなり本がかわいそうだ。

父は寝床で子守歌代わりに、小川未明の童話集を読んでくれていた。今思うと、父も子供に本を読みながら、自分も楽しんでいたのかもしれない。

 田舎で自然と親しみながら暮らし、心と体の健康を保って、ゆったり生きるのもいい。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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