パンドラの箱と救急医療問題
2009年4月14日参議院厚生労働委員会でなされた「勤務医の宿日直問題」の国会質問が、医療関係者のネット上で話題となっている。
梅村聡参議院議員は「病院勤務医は労働基準法違反をして、夜間や休日働いている。法を遵守した場合、どの程度の医師数が必要なのか、どれだけのコストがかかるのか、そのためには診療報酬をどうすればいいのか。今まさにこの問題に切り込まないと医療費を増やす議論にも、負担のあり方の議論にもならない。
"パンドラの箱"を開けることになるかもしれないが、勇気を持って開けてほしい。大臣は"パンドラの箱"を開ける勇気があるのか」と質問している。
それに対し舛添大臣は「一人の大臣が旧厚生省と旧労働省の仕事をやっている意義がまさにそこにある。ただ、"パンドラの箱"を開けようとした時に、"閉めろ"というものすごい圧力がある。しかし、この問題は国民のためを考えて、きちんとやります。この議論を厚生労働委員会で続けてやります」と答弁されている。
梅村聡議員は大阪大学第2内科の出身で、頼もしい後輩が出てきたものだ。病院崩壊、救急医療崩壊の根幹となる問題に真っ向勝負した新人議員と、それに対し堂々と受け答えをした舛添大臣に、若手勤務医から拍手・喝采が湧き上がっているという。
労働基準法には"法定労働時間、一日8時間、週で40時間。これを超えて労働させる場合には、割増賃金を支払う必要がある。通常勤務時間終了から翌日の仕事開始までの時間、原則として普通の仕事は行わない"となっている。
しかし、現実は朝から日常勤務をし、引きつづき夜間当直をして、翌日の夕方まで連続36時間勤務となることもある。過労死する危険性のある週100時間を超えて勤務しても、割増料金が支払われていないことがある。
"時間外労働が、昼間と同じような勤務体系がつづく場合、宿直許可を労働基準監督署長の許可を受けなければならない"とあるが、許可を受けていない病院もある。労働者の1%にもならない医師の労働基準法違反に対して、旧労働省の手も回らなかったのだろう。
「舛添大臣に"パンドラの箱"を閉めろとものすごい圧力をかけているのは誰か」という犯人探しの書き込みがネット上で盛んにされている。この問題は単純なものではなく奥の深いもので、複雑に絡まった糸をほぐすのは大変難しいことだろう。
メタボリックシンドローム対策の時のように、テレビ・新聞が粘り強くキャンペーンを行い、国民の理解を得れば、救急医療問題解決の道筋が見えてくるかもしれない。