単品ダイエットの落とし穴

2009年4月25日

    2009416日、別冊宝島「健康・ダイエットの落とし穴」が送られてきた。 

ページを開くと"ブームになった単品ダイエットの歴史年表"が載っていた。1975年の紅茶キノコから2008年の朝バナナまで、懐かしいものが並んでいる。

 

1987年のゆで卵ダイエットは別名"国立病院ダイエット"と呼ばれていた。発信源とされた国立病院の先生が私の所に相談に来られ「ゆで卵ダイエットがスポーツ関係者に広まり、筋力が低下したなど苦情が殺到している。私は全く関与せず、迷惑している。でたらめなダイエットを日本肥満学会で取り上げてもらえませんか」と言われた。

 

キャベツダイエットでは、若い男性が4カ月間、主にキャベツしか食べず46.5kg減量したが、筋力低下・感覚異常・口内炎があり受診してきた。皮膚に発疹が出て夜盲症になっており、ビタミンAB2B6C、マグネシウムが欠乏していた。

 

1993年のりんごダイエットでは、若い女性が3カ月間主にりんごだけを食べ30kg減量したが、起立できなくなり救急受診してきた。ビタミンB1が欠乏していた。

1996年のココアダイエットの時は、ココアに砂糖とミルクを入れ、肥満者が増加した。

 

数か月前、ルポライターの高橋繁行さんが10数年ぶりに職場に訪ねて来られた。1996年"月刊現代"7月号で肥満の特集をしたことがある。勤務後、近くのホテルに行き、コーヒー一杯で、2時間30分長話をしてしまった。月刊現代は20091月号で廃刊となり、別冊宝島に移ったという。頭髪が薄くなり、お互い歳をとったものだと笑ってしまった。

 

先週、6時から大阪市北区にあるホテルで、テレビ局に勤める友人とフランス料理を食べながら話をした。不況でテレビ業界はコマーシャル収入が減り大変なようだ。

単品ダイエットの話題が出た。友人が「ココアや納豆など、単品ダイエットの走りは大物司会者の昼の番組からではないか」と言う。私は「テレビの影響力は大きい。本当の専門家が出ていないダイエット番組が多い。大物司会者の朝のテレビ番組で取り上げる医療問題も、情報提供者だけからの一方的なものが多いのではないか」と聞いた。

友人は「取材はスタッフがやり、司会者は取材された内容の範囲内で話をしているのだろう。テレビ番組は、情報提供者からだけでなく、本当は45つの取材が必要だ。いろいろな角度から報道しないといけないが人手とお金がなく、少ない情報源に頼ってしまう」と言う。

 

単品ダイエットは非科学的な減量法だ。長くつづけると、栄養障害を引き起こす。単品ダイエットに根拠のあるものはなく、ブームに惑わされないことだ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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