新型インフルエンザと日本糖尿病学会
2009年5月20日、大阪リーガロイヤルホテル2階山楽の間で、日本糖尿病学会評議員会が開催された。狩野山楽作「吉野龍田の図」を再現した西陣綴織が正面に見える。
5月16日から関西地方で新型インフルエンザが流行しており、1829演題中、149題の演題取り消しがあった。一部大学など関西地区への出張が認められない所があるという。糖尿病患者さんが参加する市民講座などは中止となった。楽しみにしていたホテルでの立食パーティーはヘルシー弁当になり、淀川クルーズも中止された。
関東地方の教授に「この時期に、関西地方に来るのは大変だったでしょう」と聞くと、「全然気にしていませんよ。素人ほど、今回のインフルエンザを騒いでいる。強毒の鳥インフルエンザの予行演習のようなものでしょう」と言われ、関西の多くの医師と同じ考えをされていることに安堵した。
4時開始の予定が30分遅れで始まった。261名の評議員のうち、約60%の人がマスクをされていた。マスクが売り切れで、手に入らなくなっている。自宅近くで、5月18日に1箱2枚入り400円で1人3箱限定だったが、翌日には1箱600円に値上がりしていた。
評議員会は6時30分終了の予定が大幅に遅れ8時過ぎまでかかったが、内容は濃いものだった。糖尿病診断基準が新しく作られることになった。WHO(世界保健機関)とADA(米国糖尿病学会)が、1~2ヶ月の血糖コントロールの指標であるHbA1c6.5以上を診断基準としたことで、日本でもHbA1cが診断基準に採用されそうだ。
欧米の測定法でHbA1c6.5に当たるのは、日本の測定ではHbA1c6.1になるという。診断の基準値とするのか、治療の目標値とするのか、予防を開始する値とするのか、糖負荷試験の血糖値やインスリン値をどう取り入れるか、など課題は多そうだ。
医師不足は糖尿病専門医の不足にも影響してきている。各地域の基幹病院の糖尿病専門医が開業をして、糖尿病専門病院でなくなっている所もある。糖尿病の診療や、全国の実態調査などに支障がでてくるかもしれない。
メディアでは、「糖尿病や腎透析中の人が新型インフルエンザにかかると重症化する」と盛んに放送している。糖尿病でも食事療法だけでコントロールできる人と、CKD(慢性腎疾患)など合併症を持った人では異なる。基礎疾患を持った人が重症化する可能性があるのは、これまでのインフルエンザと同じことだ。
新型インフルエンザも糖尿病と同じく、誰でもかかり、死に至る可能性のある病気だ。侮らず、過剰反応にならず、正確に把握し備えることが必要だ。