噛むことと肥満・糖尿病
2009年5月23日大阪市北区中之島にあるホテルNCBで、吉松博信大分大学第1内科教授による日本糖尿病学会教育講演3「食欲調節と肥満」があった。
吉松先生は坂田利家前大分大学教授と食欲、特にヒスタミンの食欲に及ぼす影響を研究されていた。脳内ヒスタミンが増加すると食欲を低下させ、内臓脂肪を減少させるという。
ヒスタミン受容体拮抗薬であるヒスタリンhistaleanが、海外で抗肥満薬として開発されているそうだ(Int J Obes 2008)。ヒスタリンはhistamineとやせの意味のleanを合わせた言葉で、覚えやすくネーミングがいい。
よく噛むことでも、脳内ヒスタミンを上昇させることができるという。肥満者を対象にした検討で、30回噛むことにより食事量が減って体重が減少したと話された。
大阪国際会議場のポスター会場に行く途中、大阪大学の後輩に出会った。演題をたくさん出し、走り回っている。後輩も頑張っている。私が大阪大学の研究室のチーフをしていた頃、メインの学会には20題の演題を出すことが至上命令だった。チーフをしていた頃を思い出し、他大学が何題出しているか気になった。
20題をクリアしているのは東京大学糖尿病・代謝内科48題、滋賀医科大学内分泌代謝内科36題、大阪大学内分泌・代謝内科26題、東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科25題、京都大学糖尿病・栄養内科23題、順天堂大学糖尿病・内分泌・代謝内科23題、九州大学病態制御内科22題、富山医科大学第1内科20題、の8つの教室があった。
順天堂大学の河盛隆造教授は大阪大学の先輩で、大阪大学が大阪市福島区堂島にあった頃、壁を隔てて18年半隣の研究室におられた。研究棟8階の廊下を突き当たり、右のドアを開けると私達の研究室、左のドアを開けると河盛先生の研究室だった。私達の研究室で飼っていた猿が、河盛先生の研究室の女性を噛んだことがある。
研究室のアクティビティは量×質になる。演題数の多いことは、伸び盛りの若手研究者の教育・研究に役立つ。卒後5~15年が、最も研究に脂がのる時期で、いつの間にか雲の上に出ていることがある。
チーフは大変だ。各演題の結果をよく噛み砕いて結論を出さなくてはならない。20題の研究室予行を行うのに、夕方から12時過ぎるまで連続5日間かかったこともある。研究室員は代わる代わる親子丼や全部うどん(天ぷら、肉、玉子、きつね入りうどん)を食べに行くが、チーフは席を離れることはできない。耐え難い空腹感だった。
肥満・糖尿病予防には、歯を丈夫に保ち、よく噛んで過食にならないようにすることだ。