ランチョン弁当と糖尿病診療ガイドライン

2009年5月31日

  糖尿病学会の楽しみの一つはランチョンセミナーの弁当だ。糖尿病治療で最も重要なのは食事療法で、ランチョン弁当にはいろいろ工夫がなされていて参考になる。

 

2009523日の日本糖尿病学会のランチョンは"炊き込みご飯すきやき弁当"で、炊き込みご飯、キノコのせご飯、金平ごぼう、牛肉すき焼き風煮物(竹の子、花人参、しいたけ、ふき、海老旨煮)、う巻玉子、ぶり照り焼き、金柑甘露煮、タコすり身天ぷらだった。熱量712kcal、たんぱく質10.7g、脂質11.4g、塩分4.0gとなっている。

 

糖尿病専門医の女医さんは「蛋白が少ないですね。糖尿病腎臓食ですかね。腎臓食にしては塩分が多いですね」と言う。すき焼きの汁は使ってあるが牛肉は少なく、炊き込みご飯が大半を占める。3食食べてもタンパク質は10.7g×332.1gだ。

 

科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン(2007年)では"蛋白質は標準体重1kgあたり1.01.2g摂取する"がグレードA(行うよう強く勧める)となっている。食塩の摂取量については"食塩の過剰摂取は血圧上昇に作用したり食欲を亢進させるので、多くても10g/日以内"がグレードB(行うよう勧める)となっている。

 

524日のランチョンは"鮭のチーズ焼きや野菜のコンソメ煮が入った和洋弁当"だった。サーモンのチーズ焼き(焼きしめじ添え)、フルーツ(ころころ生パイン)、大根とオレンジのサラダ、添え野菜(キャベツ、ミニトマト)、豆腐コロッケ、カリフラワーのソテー、鶏肉のケチャップ煮、野菜のコンソメ煮あんかけ(ロールキャベツ、人参、かぶ)、白胡麻のおにぎり、黒米のおにぎり、発芽玄米入りちらし寿司(ジャコのせ)となっている。

 

エネルギー665kcal、蛋白質35.6g、脂質24.4g、炭水化物70.4g、塩分2.6gとなっている。この弁当を2倍にすると11330kcalになり、肥満症治療ガイドライン2006の肥満症治療食141400kcal)に使えそうだ。

 

「管理栄養士さん、気合入ってる~。全部の料理に野菜が入ってますね。黒米が使ってある。果物も入ってる」と女医さんは言う。見た目が鮮やかで、食品数が多く、野菜のコンソメ煮あんかけなど料理が凝っていてなかなか旨い。

糖尿病診療ガイドラインでは"食物繊維は血糖コントロールの改善に有効であり、血清脂質も低下させる"がグレードBに、"食事制限によるビタミン、ミネラルの摂取不足を防ぐためにできるだけ多くの食品数を摂取させる"がグレードBになっている。

 

糖尿病学会や肥満学会では講演を聞くだけでなく、展示・書籍を見て最新の知識を得、ランチョンで食事療法も学ぶとよい。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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