肝癌・脂肪肝とメタボリックシンドローム

2009年7月 7日

    200976日、ホテルグランヴィア大阪で第44回大阪産業医学研究会が開催された。特別講演は大阪大学病院長をされている林紀夫消化器内科教授の「働く世代の肝疾患対策ーC型肝炎を中心に」だった。専門外のウイルスの話は新鮮で、勉強になる。

 

日本では肝癌による死亡は年々増加し30年で3.5倍となり、2004年には肝癌死亡者数は34510人となっている。C型肝炎ウイルスによる肝癌が72.3%で大半を占め、B型肝炎ウイルスによるものは16.8%となっている。

林教授は「B型肝炎は、ゲノタイプ(遺伝子型)がAからFまであり、日本人はゲノタイプC84.7%と最も多く、B12.2%となっている。最近、欧米人に多く日本人になかったゲノタイプAが、都会の若い男女を中心に広がっている。ゲノタイプAに感染すると症状が激しく、20%の人が慢性肝炎になるので注意が必要だ」と話された。

 

C型肝炎については「C型肝炎の50%は輸血など血液製剤によるもので、母子感染や男女間での感染は少ない。麻薬、使い捨てでない鍼灸の針、医療従事者の針刺し事故、ファッション・タトゥーなどによるものがある。タトゥーの墨にC型肝炎ウイルスが含まれている場合には感染する可能性がある。

C型慢性肝炎の治療はインターフェロンの長期投与、新薬ペグインターフェロン、リバビリンの併用、で効果が高まった。難治性とされる1型高ウイルス量のC型肝炎でも52%効果があり、それ以外のC型肝炎では84%著効がある。仕事で入院治療が難しい人は、外来でも治療できるようになった」と話された。

 

肥満と肝癌との関係について「近年、脂肪肝による肝癌も増加しつつある。肥満男性では肝癌の発症率が4.52倍になるという報告がN Engl J Med 2003にある。米国では20%に脂肪肝があり、23%がNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)で、NASH20%が肝硬変になる」と述べられた。

 

私達は腹部エコーを用い脂肪肝と腹囲との関連を検討した所、男女とも脂肪肝の程度(正常、まだら脂肪肝、びまん脂肪肝)の順に、段階的に腹囲が大きくなっていた。メタボリックシンドロームの頻度も男女とも脂肪肝の程度の順に高くなっていた。

 

以前、日本テレビ"特命リサーチ200X"で脂肪肝と内臓脂肪の関係について取材を受けたことがある。「腹腔内の内臓脂肪が蓄積すると、門脈血中の遊離脂肪酸が増加する。それが直接肝臓に流入して、肝臓での脂肪合成が盛んになり脂肪肝となる」と答えた。

 

肥満・メタボリックシンドロームによる肝癌・脂肪肝が増加してきている。肝癌、脂肪肝を防ぐためにもメタボ対策が必要だ。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
メタボリックシンドローム

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