ビールと痛風・高尿酸血症

2009年7月28日

   2009722日、大阪市北区マルビルにある第1ホテル宴会場で、近畿格致会役員会が開かれた。

 

懇親会のビールはサントリーのモルツ大瓶だった。2009年初め、ビール会社OBの知人6人に「今、一番美味しいビールは何か?」と聞いたことがある。6人中4人が「サントリーのプレミアムモルツだ」と答えた。

 

ビールをたくさん飲むと痛風・高尿酸血症によくないのは、主としてカロリーの過剰摂取による肥満とアルコール自身の作用による。アルコールは肝臓でのATPを消費させてプリン体分解・尿酸合成を亢進させるとともに、腎臓からの尿酸排泄を抑制する。

 

ビールに含まれるプリン体による影響は、それほど大きくない。ビール大瓶1本に含まれているプリン体は2884mgと、豚レバー、牛ヒレ肉、カツオ切身などの1人前150200mgに比べ少ない。健康な人は1700mgのプリン体を体内で作っている。ビールは他のアルコールと同様飲みすぎないようにすればよい。

 

以前、メタボリックシンドローム講演をした後、ある方に「先生、面白い所に連れて行ってあげましょうか」と言われた。大阪の繁華街ミナミからタクシーに乗り、北新地に向かった。タクシーの中で「会社の社長が1人で沈思黙考する店で、騒ぐと追い出されます」と言われた。

 

店は会員制クラブで、一般の人は入れないようになっていた。スポーツ界ではWBCで世界一となった監督クラスしか会員になれないという。ドアを開けると、中は薄暗く静寂としていた。そこには、医師仲間では決して行かなかった知らない世界があった。店は小さく、奥にカウンター席がある。手前のテーブル席に座った。

 

「あそこがサントリーの故佐治敬三会長が、いつも座られて沈思黙考されていた席です」とカウンターの席を指さされた。壁に向き合っていれば、他の客からは後ろ姿しか見えない。1時間でも2時間でも、誰にも邪魔されず沈思黙考することができる。店の女性は話しかけないし、他の客も話しかけない暗黙のルールがあるようだ。

 

59段の文豪ゆかりの宿で書いた大作家が利用する"山の上ホテル"のように、このクラブは大社長が使いやすいようにできていた。北新地の高級料亭や華やかなクラブでの宴会をした後、家庭に帰る前に、大会社の社長はここで決断をしていたのか。社長は孤独だ。社長の決断が、多くの社員の人生を大きく変えてしまう。

 

大社長たちは、この狭い簡素と静寂の空間で、1人酒を飲みながら意識を集中させ、大きな決断をされてきたのだろう。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
目でみる臨床栄養学 UPDATE
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