頼れる病院・消える病院とマニフェスト

2009年8月15日

    2009812日、友人の公認会計士から「頼れる病院・消える病院」のメールが来た。

メールには週刊ダイヤモンド2009/8/1522合併号にある「大阪病院ランキング表」が添付されていた。週刊ダイヤモンドは初めて聞く名前で、医療関係者にはなじみがない。

 

公的病院と200床以上の民間病院を対象に"医療の機能"と"経営状態"のアンケートをとり、100点満点で評価している。

①週4日以上を受け入れる診療科目数5点、②医師数/一般病床数15点、③専門医数/一般病床数10点、④看護婦の配置基準15点、⑤保有する施設・設備5点、⑥一般病床利用率10点、⑦平均在院日数10点、⑧人件費率15点、⑨経営収支比率15点の配分となっている。

 

57病院中1位は大阪大学病院で93点、次いで大阪医科大学病院90点、大阪厚生年金病院90点、済生会中津病院89点、大阪労災病院88点の順に、下位はH市立病院38点、K市民病院43点、J市民病院52点、S市民病院53点、市立K病院53点の順になっている。

 

経営収支比率は100%でトントン、100%を下回ると経営は厳しくなる。経営収支比率は(医業収益+医業外収益)/(医業費用+医業外費用)で計算される。大阪府下57病院中100%以上の病院は17病院、9099%は21病院、8089%は13病院、7079%は5病院、70%以下は3病院となっている。大阪では70%の病院が赤字となっている。

人件費率は50%が基準で、60%を超えると経営は厳しいとされている。人件費率が著しく高い病院もあり、6079%が6病院、80%以上が4病院ある。

 

ランキングが高く良質の医療を行っている病院の中にも、負債額が多く消えてなくなるかもしれない病院もある。放漫経営の病院も一部あるが、まともに診療を行っている多くの病院の経営が悪化しているのは、制度のどこかがおかしいのだ。

 

どうすればよいのか?診療に見合った収益にするしかないだろう。OECDHealth Data 2008 によると、2005年のG7+北欧3カ国の医療費のGDP比は9.87%となっている。日本は最下位の8.1%なので、医療費をG7並みにして病院の収入を増やせば、今の病院機能を維持できるのではないかと思う。

 

各政党のマニフェストには診療報酬・医療費を上げ、医療に力を入れるとしている。

「地域の基幹病院が崩壊すると地域医療は崩壊し、診療所も地域住民も困る。病院崩壊を防ぐには、医療分野全体を一律に底上げするのではなく、大所・高所から医療を考える必要がある。どの政党が政権をとるかわからないが、各種圧力団体に屈することなく、毅然とした態度で政策を実現していただきたい」と私は考える。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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