ミシュランガイドと刺激的な老後生活
2009年10月13日、ミシュランガイド京都・大阪版が発表された。
想い出深い店がいくつか選ばれている。「花外楼」は北浜にあり、木戸孝允が名付け親で大久保利通、伊藤博文、板垣退助らが通っていた。
大阪大学第2内科から教授が出た時、花外楼で祝賀会を行うのが慣例だった。第4回と第5回の日本肥満学会会長をされた垂井清一郎先生の教授就任祝賀会もここで行い、全員で「鉄腕アトム」を歌った。「耳をすませ、目をみはれ、心正し科学の子・・人間守って、心はずむ科学の子」谷川俊太郎の詞がいい。
ある教授の祝賀会で研究室を代表して私がお祝いの余興をすることになり、名曲「おふくろさん」を唄った。歌の前に「おふくろさんのように私達を指導して下さった○○先生に捧げます」と前ふりをした。席に戻ると先輩に「何がおふくろさんや。どこがおふくろさんや」と叱られてしまった。
先輩の言葉通りで、私はその新教授のことはよく知らず、話したこともほとんどなかったのだ。それ以来反省し、エビデンスのないことで人を誉めることはしないようにしている。おふくろさんは前ふりをしたくなる歌なのだろう。ある歌手も前ふりをして、作詞した川内康範の逆鱗に触れている。
「蘆月(ろげつ)」は北新地本通りにあり、紙でできた鍋なので欧米人には珍しい。ヨーロッパ肥満学会会長などと行った。「芝苑」は北新地から少し離れており、入るとまず1階のカウンターでお抹茶とお菓子が出る。日本内分泌学会理事長、大学病院長と3人で食事をしたことがある。「一宝」は江戸堀にあり、未使用の油で天ぷらをあげてくれる。
ある店に親孝行のつもりで両親を連れて行ったことがある。「もったいない。贅沢だ」と、喜ばれなかった。父は最後までデパートの最上階にある大食堂が好きだった。
10月14日夜、大学の同級生と寿司を食べながら老後生活について話をした。「老後生活は、何より健康が一番だ」「社会的な活動を行っている人は元気がいい。夫婦で家の中に閉じこもっている人は老いるのが早い」「画家は長生きをして、いつまでも若々しい。創造的なことをつづけるのがいい」
「ピアノを弾いている人はいつまでも年をとらない。指を動かすことがいいのだろう」などという。私の母が87歳の高齢で現役歯科医をしているのも、入れ歯の技工をして指を使っているからかもしれない。
親友が「老後を元気に過ごすには刺激が必要だ。月に1度、ミシュランガイドに載っている店に行けば、刺激的な老後生活が送れるのではないか」と締めくくった。