うつ病・ハラスメントとメタボリックシンドローム

2010年2月 8日

    201021日、ホテルグランヴィア大阪で第45回大阪産業医学研究会が開催され、130名が参加した。

 

特別講演は大阪樟蔭女子大学人間科学科臨床心理学の夏目誠教授による「職場のハラスメントと労働新認定基準、新型うつにどう対処するか」だった。199643万人だったうつ病は2009100万人と2.3倍に増加した。

うつ病の数が増えた最も大きな要因は、ドイツ医学の成因による診断基準から、アメリカ医学の症状による診断基準に変わり、新型うつ病なども加わったことが大きい。原因はどうであれ、うつ症状が2週間つづけばうつ病と診断することに変わっているという。

新型うつ病は若い女性に多く、過食、過眠となることもある。うつ病は原則休ませるとされているが、新型うつ病は休ませるのが良いか勤務継続が良いか判断が難しく、抗うつ剤や抗不安剤の効果は、もう一つだという。

 

うつ病が増加した2つ目の要因は、日本の社会が変化したことにあるという。大学のクラブ、同好会が衰退し、人との付き合いもなく社会に出た人の中には、人間関係が築けない人がいる。父親にも、学校の先生にも叱られたことがなかった新入社員が、上司に叱られて、ハラスメントと感じることも多いそうだ。

 3040歳代の若い課長クラスの上司も部活、サークルなどの経験がなく、部下の叱り方もわからず部下とのコミュニケーションも築けない人が多くなっている。学生を叱るときにはハラスメントにならないよう、挨拶、声かけ、雑談ができる人間関係ができた後、育てる愛があるかどうか確かめて叱るようにしている」と夏目教授は話された。

 

メタボリックシンドロームの診断基準も、ドイツ的に成因を重視するか、アメリカ的に症候を重視するかで異なってくる。日本の診断基準は内臓脂肪症候群から出発しており、内臓脂肪の蓄積を必須項目とし成因を重視している。ヨーロッパの学者も日本と同じ考え方の人が多い。

米国のメタボ基準はシンドロームXから出発しており、症候を重視し肥満、糖代謝異常、脂質異常症、高血圧を同列として、必須項目を置いていない。遺伝的に偶然、糖尿病や高脂血症、高血圧を合併していても、メタボと診断される。

欧州的考え方では成因を腹部肥満・内臓脂肪型肥満としているので、予防・治療は食事療法・運動療法によって内臓脂肪を減少させることになる。アメリカ的考え方では肥満がなくてもメタボと診断されるので、糖尿病や抗高脂血症や高血圧の薬を別個に服用しなくてはならないことになる。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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