インクレチンとメタボリックシンドローム
2010年2月18日、兵庫県西宮市にあるノボテル甲子園ホテルで第11回阪神生活習慣病研究会が開催された。
特別講演は兵庫医科大学糖尿病科の宮川潤一郎準教授による「糖尿病治療薬の新展開―インクレチン治療薬」だった。インクレチン治療薬は10年ぶりの糖尿病新薬ということで、話題になっている。
インクレチンはグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、GIPなど消化管に存在するホルモンで、食後の血糖上昇に合わせてインスリン分泌を促進する作用や、血糖を上昇させる作用のあるグルカゴンの分泌を抑制する作用がある。
インクレチンには血糖を下げる作用のほかに、脳の視床下部にあるPVN(室旁核)に働いて食欲を抑える作用、心臓を保護する作用、肝臓での糖新生を抑える作用、胃の内容物をゆっくり排泄させる作用、など多彩な作用があるという。
「GLP-1はDPP-4(ジペプチジルペプチダーゼ-4)という酵素によって分解され活性を失う。インクレチン製剤には経口剤のDDP-4阻害薬と注射薬のGLP-1受容体作動薬とがある。DDP-4阻害薬は3ヶ月でHbA1cを0.7、GLP-1受容体作動薬は1.5下げる」と話された。
私が1978年大阪大学第2内科に帰局した頃、松山辰男先生ら糖尿病研究グループは盛んにグルカゴンの研究をしていた。インクレチンは長年の歳月を経て、ようやく日の目を見たのだろう。
尼崎医師会の長尾和宏先生から「インクレチン治療でアディポネクチンは上昇するのかどうか?メタボリックシンドロームに対する影響は?」という質問があった。「どちらも、未だ検討されていない」と答えられた。
インクレチン注射は食欲抑制・体重減少があるようなので、アディポネクチンを上昇させ、メタボリックシンドロームにはいい影響があるかもしれない。インクレチンは多様な作用があり、長期間使用してみないとどんな副作用が出るかわからない。まだまだ未知の部分が多く、じっくり慎重に育てたい薬だ。いずれにしても、糖尿病では食事と運動が基本となる。
2月20日の街歩きは、JR大正駅周辺を散策した。職場のJJ読者モデルをしていた同僚医師から、JR大正駅周辺に沖縄料理が多いことを聞き行ってきた。沖縄料理は夜だけの所が多く、3軒目でようやく昼やっているところを見つけた。
私は海ぶどうとこま肉のコンビの「海ぶどう丼」を、妻は甘辛ひき肉にレタス、トマト、チーズをトッピングした「タコライス」を食べた。デザートは"さとうきびのブルーシールアイス"にした。店内には坂田利夫、山田花子などのサイン30枚が壁に飾ってあった。JR大正駅周辺はひっそりとした街だった。