京都インクラインの桜とメタボリックシンドローム
2010年4月3日土曜午前8時10分、自宅を出発し、東京での新居を探しに行く娘を伊丹空港へ送り、そのまま中国縦貫道から名神高速道路を通り京都に向かった。
9時55分、平安神宮前の赤い鳥居が見える駐車場から京都市美術館、京都会館、平安神宮を巡り、岡崎通りから仁王門通りに行った。川の手前の桜の花は白い色だが、対岸にある京都市動物園の桜の花は濃いピンク色をしていた。桜の花の蜜を求めて、小鳥が飛んできている。桜の花は、何度見ても、本当にきれいだ。
10時30分、"岡崎桜回廊十石舟めぐり"乗り場に行くと、夕方5時まで予約でいっぱいになっていた。船は9時30分から15分毎に出るが、8時から行列ができていたという。
琵琶湖疏水記念館に入った。琵琶湖疏水は琵琶湖から京都までの水路で、物資の輸送と水の確保のため、明治時代に作られている。大津市三井寺近くから山科盆地を経て、南禅寺から鴨川へ流れていき、蹴上(けあげ)には発電所もある。サスペンスドラマによく出てくるアーチ形をしたレンガ造りの南禅寺"水路閣"や、桜の名所"哲学の道"の水路は、琵琶湖疏水の分流になる。
インクラインの桜は満開になっていた。インクライン(incline)は傾斜鉄道のことで、ケーブルカーが人を乗せて運ぶのに対し、インクラインは荷を運ぶ。琵琶湖疏水の蹴上付近の急こう配では、三十石船をそのまま台車に載せて運んでいた。インクラインの桜トンネルの下を、歩いて昇った。欧米からの観光客もいるが、すれ違う人達の言葉には中国語も多い。
つい1週間前の3月27日に、京都三条から市動物園、インクラインの桜を見に行った友人の医師が、冠動脈硬化症で心臓バイパス手術のため、31日入院した。友人とは毎週、名所・旧跡の話をする間柄で、27日の花見の時は元気で、自分に心臓病があるなどとは、考えてもみなかったという。
私は毎日、健診受診者に「メタボリックシンドロームや糖尿病を放置しておくと、心筋梗塞・狭心症や脳梗塞になることがありますよ」と話しているが、身近な人が病気になると、心の衝撃は大きい。
友人は先月、私に「3月で退職し、4月からは、のんびり余生を楽しむ」と言っていた。私はインクライン満開の桜の中、レールの上を歩きながら、「元気で働いているうちに、少しでも余生を楽しんでおこう」と思った。
京都から帰宅して、メール仲間に"京都桜情報(インクライン満開です)"のタイトルでメールを送った後、満開の桜の花と友人の顔が想い浮かび、涙が込み上げてきた。