体脂肪分布異常とメタボリックシンドローム

2010年6月30日

    2010628日、日本臨床2011増刊「メタボリックシンドローム」の原稿"体内脂肪分布の異常"を送った。

 

1980年代より、国内外において、肥満における合併症の発生は、どの部位に脂肪が蓄積するかという脂肪の分布状態が深く関係していることが明らかとなってきた。体脂肪分布異常を表わすウエスト/ヒップ比の高い上半身肥満(腹部肥満、中心性肥満)はW/H比の低い下半身肥満(四肢型肥満、末梢型肥満)に比べ、虚血性心疾患や糖尿病になりやすい。

 

私達はCTスキャンを用いて体脂肪分布を分析し(1983年)、内臓脂肪面積と皮下脂肪面積の比、V/S比が0.4以上の内臓脂肪型肥満は皮下脂肪型肥満に比べ、糖・脂質代謝異常や高血圧が多いことを示した。

 

正常体重者においても内臓脂肪蓄積は糖尿病、脂質異常症、高血圧、動脈硬化症と関連し、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)は内臓脂肪型肥満の延長線上にある。内臓脂肪蓄積によるアディポサイトカイン分泌異常(アディポネクチンの低下、PAI-1の増加)など脂肪細胞機能異常が、合併症発症基盤となっている。

 

629日午前010分寝床についた。「淋しくなるね」。「淋しくなるわね」。あと4日で、これまで一度も我が家から出たことのなかった娘が嫁いでいく。

午前355分、目が覚めた。想い出が走馬灯のように駆け抜けていく。幼少期を過ごした米国ロサンゼルスでは、娘を買い物に連れて行くと、周りの人達が「キュート!」と言って集まって来ていた。ナサリー(幼稚園)の入園は先着順だったので、東海銀行の駐在員の人と、子供たちのため真夜中の3時から生ぬるい風が吹く中、懐中電灯を持って並んだ。

 

日本に帰国してからの阪大病院時代、日曜日には2階の書斎で英語論文や医学雑誌の原稿を書いていた。下から上がって来た娘といっしょに紙飛行機を飛ばしたり、追いかけっこをしたりして遊んでいた。

夏休みは家族4人水入らずで、年に一度のドライブ旅行をしていた。信州6日間、那須高原・箱根8日間、能登半島一周5日間、紀伊半島一周4日間、山陰4日間、北海道8日間、別府・長崎7日間などした。車の中では、しりとり遊びをしたり、徳永英明や甲斐バンドのカセットテープを聞いたりしていた。

私の父母の金婚式50周年祝いでは、姉家族に叔母2人も加わり11人でハワイに行った。潜水艦に乗って娘が船酔いをした時、亡き父は「かわいそうにのう」と心配していた。娘は私の父母にとって一番下の孫で、可愛がられていた。

想い出を巡るうち、いつの間にか夜が白み始めていた。

徳永勝人 医師
(とくなが かつと)
医学博士


1968年
広島県立庄原格致高校卒業
1974年
大阪大学医学部卒業

内臓脂肪型肥満、
標準体重=身長X身長X22
を提唱する肥満の
第一人者として活動中。

1983年-1985年
南カリファルニア大学
研究員
大阪大学第2内科講師
市立伊丹病院内科部長
大阪大学臨床助教授
兵庫医大実習教授
を経て
高槻社会保険健康管理センター
センター長として勤務

日本肥満学会肥満症診断
基準検討委員会委員
日本糖尿病学会評議員
日本動脈硬化学会評議員

NHK「きょうの健康」での
講師を務める。
著書に
  「肥満Q&A
  「食事で防ぐ肥満症」
 
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メタボリックシンドローム

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