大腸癌とメタボリックシンドローム
2010年7月5日、ホテルグランヴィア大阪で第46回大阪産業医学研究会が開催された。
特別講演は石川秀樹京都府立医大特任教授の「大腸がん対策の最近の動向ー便潜血検査は有効か?大腸内視鏡検査の適応は?」だった。2008年の大腸癌の死亡率は男性では肺癌、胃癌についで3位、女性では1位になっている。
「大腸がんの予防は、癌にならない一時予防と、癌死を予防する二次予防がある。大腸がんを予防するには、適度な運動、野菜不足にならない、豚・牛の肉摂取を80g以下にする、酒は男性では1合以下に女性では0.5合以下にする、タバコを吸わない、肥満にならないことだ。
大腸癌の罹患率は直線的に増加していたが1990年前半に上昇が止まり、1998年から大腸癌の年齢調整死亡率は減少している。これは1990年ごろから始まった大腸内視鏡により、大腸がんの前癌状態である大腸腺腫を摘除している一次予防によるものだろう。
2008年の大腸がん死亡率が最も高い県は内視鏡専門医が少ない青森県で、内視鏡専門医の多い石川県は大腸がん死亡率が低く、県別人口当たり内視鏡専門医の数と大腸がん死亡率は逆相関する。前癌状態の腺腫を摘除することが、大腸がん死亡率を減少させる。
40歳以上の人は年1回、便潜血検査(免疫法)を2日間行い、便潜血が陽性の人は大腸内視鏡をするとよい。40歳未満の人は大腸癌になる頻度は低く、痔からの出血で偽陽性になることが多いので、40歳以上で行えばよい」と話された。
大阪中央病院の姫野誠一先生から、健診での便潜血陽性と大腸がんの頻度についての質問があった。石川秀樹先生は「便潜血陽性は5~7%で、500人に1人の割合で大腸癌が発見される」と答えられた。
私が勤務している健康管理センターでも同様の結果で、2008年に便潜血2日法を行ったのは16297人で、陽性の人は847人(5.2%)だった。大腸癌は大腸内視鏡を行ったうち3.6%あり、549人に1人の割合だった。
内臓脂肪と大腸がんとの関連は、同級生の河田純男山形大学第2内科教授が行っている。大腸腺腫51名の内臓脂肪面積は99平方cmと健常者52名の67平方cmに比べ大きく、脂肪組織から分泌され細胞の炎症を抑える血清アディポネクチン量が大腸腺腫患者では7μg/mlと健常者の10.6μg/mlに比べ低いことを報告している。
40歳以上の人では便潜血検査を施行し、便潜血陽性の場合は大腸内視鏡を行い、腺腫があれば除去するとよい。大腸がんはメタボリックシンドロームと関連し、予防には運動すること、アルコールを飲み過ぎないこと、内臓脂肪型肥満にならないことが重要である。