アジアの肥満の国家的取り組み
2010年7月11~15日、開催された第11回国際肥満学会では、アジア・オセアニア肥満学会(松澤佑次会長)の分科会が開かれ、アジア各国での抜本的な肥満対策が検討された。
日本からは宮崎滋東京逓信病院副院長が、日本肥満学会のメタボリックシンドローム対策の活動と、国家的な取り組みである特定健診・保健指導について紹介された。「メタボ対策に積極的に取り組んでいる地域では、体重の減少、血糖値の改善があり、好結果が出ている」と話された。
韓国でも、肥満やメタボに対し、生活習慣を改善の進行状況が発表された。大学や地域で体重・腹囲を測定し、保健指導を行うことによって成果を上げているという。
台湾からは、消費カロリーがわかる歩数計を使ってメタボ予防効果を高めていることが報告された。データがメールでやりとりされ、インターネットで指導を受けられるという。マレーシアからは、青少年を対象とした保健指導によって、体組成がどのように変化するか報告された。
松澤佑次会長は「アジアで肥満対策は始まっているが、日本のように国を挙げての取り組みには至っていない。韓国の研究者らは特定健診に関心を持っている。成功するには健診制度の整備に加え、メタボに対する国民の意識を高めて行く啓蒙活動が必要だ」と述べられている。
7月31日、イラン在住の人と話をした。「イランは暮らしやすい国で、テヘランには日本人が500人住んでいる。石油が出るので、貧しい人は一部で、田舎の家でも大理石でできている。ガソリンは月80リットルまで無料で配給され、自動車の生産もアジアで5番目に多いが、イランには肥満の人は少ない」と言われた。
8月30日、UAE(アラブ首長国連邦)在住の人と話をした。「UAEの道はよく、スピードが出やすい。外は50~60℃で皮膚が焼けつくように暑いのに、ビルの中は20℃以下に冷房が効きすぎている。UAEではお腹の出た肥満の人が多い。牛肉、羊肉、鶏肉など肉類をよく食べ、油を使った料理が多いからではないか」と言われた。
9月6日、インドネシア在住の人と話をした。「ジャカルタには日本人が7000人いる。インドネシアは経済発展が著しく、貧富の差が益々開いており、富裕層の昼食代は700~1000円だが、一般の人の昼食代は30~50円と格差が大きい。インドネシア人に肥満は少なく、太っているのは富裕層の人達だ」と言われた。
中国、インドなどアジアの多くの国では、富裕層に肥満が多い。その国全体に肥満が増加した時、肥満・メタボリックシンドロームに対し、国家的取り組みがなされるのだろう。